-④日本との違い- 光は動力源が気になったので男性に質問してみた。光「これはどうやって動かすんですか?」男性「どうやってって・・・、このクラッチを踏んでここに魔力を流すだけだよ。」 すると男性は青いクリスタルに指を近づけてクリスタルを光らせ軽トラを起動してみせた、もう1台はオートマなのでクラッチを踏む必要は勿論ない。光「凄い・・・。」男性「いや、この辺りじゃ普通だけど。」光「え?」男性「皆魔法を使えて当たり前じゃん。」 光は驚くばかりだった、魔法があるのは流石異世界といえる。光も魔法を使ってみたいと思った。光「よし・・・。」 光は右手を前に出して『作成』スキルを使い魔力を作ってみた。全身が綺麗なオーラで纏われる、それをオートマの軽トラのクリスタルに指から流すと軽トラが起動した。光「やった!」男性「やるじゃないか、ただあんた、免許は?」 光は日本にいた頃の免許証を出した、どうやらこっちの世界でも有効らしくすぐに乗れるらしい。日本語も向こうの言語に翻訳されて男性側には表示されているようだ。男性「吉村 光か・・・、珍しい名前だな。俺はガイだ、よろしく。」光「ガイさん、よろしくお願いします。これからまた色々と教えて下さい。」ガイ「任せな、俺でよかったら何でも聞いてくれ。」 頼もしい仲間が増えて光は嬉しかった。そう言えば1つ忘れていた事があった、雑貨屋に行かなければならない。ゲオルという人にお礼を言っておかなければならなかった、この世界に来た初日、川辺で倒れていた自分を運んできてくれた恩人だ。光「ガイさん・・・、ここに雑貨屋さんってありますか?」ガイ「食料の調達かい?街に入ってすぐの緑色の店だよ。」光「ありがとうございます、行ってきます。」 光はガイと別れ街へと向かった、街に入ってすぐの建物が緑色できっとそこが雑貨屋なのだと分かった。とりあえず中に入ってゲオルを探すことにした。重くて大きな赤い扉を開け・・・、ようとしたら自動で開いたので光はびっくりした。きっとこれも魔法なんだ、もしくは神様が便利なように作ってくれたんだと解釈した。 扉から中に入って中の商品を物色しつつゲオルを探すことにした、中には塩や砂糖といった調味料から洗面用具など色々揃っていた。ただ、レトルトカレーやインスタントラーメンといった即席の食品まである、まるで日本
-⑤お金はどうしよう- 光は一先ず食料を手に入れる術を手に入れようとした。何でもかんでも『作成』スキルに頼ってばかりいたら周囲の人に怪しまれるし、ずっとネスタの家でただ飯を食べる訳にもいかない。 まず、光は転生する前に自分が元々住んでいたアパートに残っている食料を持ってこれないかと考えた。自分自身が『移動するスキル』を『作成』して日本とネフェテルサを往復して持ってきたら・・・、いや、結構時間がかかる。 では、『転送』のスキルを『作成』しよう、冷蔵庫ごと転送しちゃえばいいのだ・・・、この世界には電気が無い。そうだ・・・、あれがあるじゃないか、あれを『作成』して設置しよう。 光は、丁度近くにいたゲオルに尋ねてみた。光「この辺りって結構晴れていますか?」ゲオル「そうですね、雨は1か月に2~3回あるかないかではないですかね、でも夏になる直前は鬱陶しい位毎日の様に降りますがね。」光「それって何月くらいですか?」ゲオル「だいたい6月くらいですね。」 どうやらこの世界にも梅雨の時期があるらしい、まさかここまで日本を再現してくるとは神様って本当にすごいなと改めて思った。 とりあえず光はゲオルの店を出て職業を探すことにした。ゲオルによると仕事を探す為にもこの町の冒険者ギルドに行く必要があるらしい、今年からギルドカードが履歴書の代わりになるのだという。早速光はゲオルに道を聞いて冒険者ギルドに向かう事にした。街の中心部にあるので歩いて行けるらしいので向かおうとしたが、その前に喉が渇いたので飲み物を手に入れることにした。 市場とかではどんなお店があるかをちらっとしか見ていなかったのでお金のことを全く調べていなかった。ゲオルの店の中にある飲み物コーナーに向かう。光「えっと・・・、お茶は・・・、128円・・・、円?!噓でしょ?!」 光は恐る恐るだが懐に入れていた財布から1000円札を出しゲオルに聞くことにした。光「ゲオルさん・・・、まさかこれ・・・、使えませんよね・・・?」ゲオル「何を仰っているのですか?当然、使えるに決まっているじゃないですか。ほら、レジの所の看板をご覧下さい。魔法マネー(電子マネー)各種や魔力カード(やクレジットカードは勿論、デビッドカード)もお使い頂けますよ。」 お・・・、思いっきり日本じゃん・・・、これも神様がしたって事なのと光は流石に
-⑥心配する必要なかったじゃん- ドーラがどうしてびっくりしているのかを光は理解出来なかった。光「どうしたんですか?」ドーラ「すみません。あの・・・、恐れ入りますが、もう働く必要無いんじゃないですか?」 どうやら身分証を提示した時に銀行残高も見えるらしく、その金額を見て驚いた様だ。ただ、光はそんなに驚くほど持ってないんだけどと思いながらドーラに登録を進める様にお願いした。思ったよりあっさりと終わってしまった。ドーラ「はい、登録が完了しました。こちらがギルドカードです。こちらには魔力により光さんの職歴やお持ちの資格などの情報が登録されています、これを職場での面接時に持っていけば大丈夫ですのでね。」光「ありがとうございます。」 光はギルドを出てゲオルの店のATMにカードを差し込んだ、「残高照会」のボタンを押すとそこには「1京円」の文字がありまた神様の仕業だなと愕然とした。しかし、働かずに過ごしていたら周りの住民に怪しまれる。街中にあるパン屋が従業員を募集していたので一先ずそこで働くことにした。 次は住む家だ、広めの土地を買える財産があるみたいだがやはり怪しまれたくないので一般家庭レベルの土地と一軒家を購入した。その事をネスタに話し、建設が終わり次第引っ越すつもりだという事も伝えた。 数日後、建設が終わったという連絡を受け、引っ越すことにした。この世界に来て間もないから特に大それた荷物がある訳ではないので荷造りにはさほど時間はかからなかった。 出発の時、玄関でネスタが光を待ち構えていた。ネスタ「寂しくなるね、ずっとここにいてくれて良かったのに。」光「いえいえ、そう言う訳にもいきませんので。」ネスタ「また遊びにおいでね。」光「お世話になりました。」 そういうと2人は抱き合い、光は新居へと向かった。 光の家はネスタの家から街を挟んで反対側にあった、特に急ぎの用事もないしパン屋での仕事も明後日からなのでゆっくりできる。なので光はのんびり歩いて行く事にした。空は青く澄んで空気が美味い。 1度ゲオルの店に寄り周りの目を気にしながらATMで支払いの金を下ろした。下ろした金を封筒に入れ、新居へと向かう。 街を抜けて数分歩いたところに新居があり、不動産屋の店主が待ち構えていた。店主「おはようございます、光さんですね?この度はこちらの物件のご購入あり
-⑦本格的な生活と光の秘密- 店主は周りを見回して光に聞いた。店主「そう言えば家財道具や家具はどうされるのですか?何なら当店で揃えさせて頂きますが。」 『作成』で作ったり日本のものを『転送』しようと思っていたから何も買っていない。光「注文しているものがもうすぐ届く予定でして、足らないものは作ってみたりしようと思います。」店主「ご自分でですか?!」 店主はかなり驚いている様だが日本にいたときはDIYにハマっていた時もあるので問題ない。 店主と別れると光は『転送』スキルを使用し日本にある自分の家具や家財道具、そして家電を新居に設置した。光「さてと・・・。」 光は屋根に登り巨大なソーラーパネルを2枚『作成』し設置した。先ずは雨の日の為に蓄電池を取り付け、家の中に配線を通した。コンセントも『作成』して設置する。電灯は可能なかぎり蠟燭の明かりに色を合わせたものを選んだ以外は日本から持ってきた家電をコンセント繋げた、一先ず日本から『転送』した大きめの業務用の冷蔵庫の電源を入れ蓄電池に電力が貯まるまでとりあえず街の中で食料を中心に買い物を行う事にした。埋め込んだソーラーパネルに合わせて屋根の色は黒に塗って蓄電池は木箱に隠す、これで目立つことはないだろう。 市場で新しく仕入れた食料を冷蔵庫に詰め込むと、元々冷蔵庫に入っていた食料の鮮度等を確かめた。明日使えば何とかなるものも含め全て大丈夫そうだ。 さあ、光の本格的な「特に何もしない異世界生活」の始まりだ。光「さて、これから本格的な異世界生活の始まりだ、やるぞー!」 次の日、今日から新居での新生活の始まりだ。光は朝イチのモーニングルーティンの1つにしている朝シャンを済ませ洗濯機を回し、IHクッキングヒーターでハムエッグを作りオーブントースターでイングリッシュマフィンを焼くことにした。香ばしい香りが部屋を包む、因みに光はパン類はカリカリサクサクと音がするまでしっかり焼く派だ。 一先ず今朝のニュースを確認する事にした、昨日家電を設置した時に調べたのだが奇跡的にテレビ放送は受信できるらしく、光は助かっていた。 光は朝のニュースを確認する事にした、ただ日本の放送を受信しているのだ、日本のニュースが当然の様に流れる。そう言えばここの人間は情報をどうやって共有しているのだろうか。新聞・・・、的なものがあるのだろうか
-⑧食料を得る- 新聞屋は光の必死な顔に少し引き気味だった、光はかなり強めに新聞屋の腕に掴んでいる。新聞屋は後ずさりしながら光に告げた。新聞屋「わ・・・、分かりました。一旦店に戻ってきます。タイムカードを押してこないといけませんので。すぐに戻って来ますからちょっと待っ・・・。」光「早く・・・・、早くしてください!!!お腹が空いて我慢できそうにありません!!!」新聞屋「やたら大きな魔力保冷庫(冷蔵庫)があったのはそういう理由だったのですね、分かりましたから手を放してください!!!」 ナルと名乗ったその新聞屋は逃げる様に光の家を出て店に急いだ。流石に大食いだからって女性1人で大鍋に並々入ったコンソメスープをすぐに平らげることは無いだろう、ただ急ぐしかない、それがナルに残る唯一の選択肢だった。 光はナルが家を出た後、一心不乱に鍋のスープを食べた。こんなに温かく優しい味のスープは久々だ。落ち着いてイングリッシュマフィンをもう1個焼こう、スープにつけたらぴったりだ。オーブントースターの電源をいれ、テーブルのスープに戻る。やはり美味しい、光は夢中になって食べた。光「美味しすぎる・・・、ナルさん・・・、本当に新聞屋さんなの?!」 鍋のスープが底を尽き、光は椅子にもたれた。その瞬間ナルが家に必死の形相で入って来た、空っぽになった鍋を見て開いた口が塞がらない。ナル「急いで何か作ります、待っててください!!!」光「は・・・、やく・・・、お・・・、腹・・・、が空い・・・、て・・・、死に・・・、そう・・・。」 ナルは急いでエプロンを締め米を研ぎ始めた、土鍋に米を流し込みつけ置きをする。その間に鍋いっぱいの水に昆布と鰹節を入れて出汁を取る、アジの干物を魚焼きグリルに入れると火をつけた。IHクッキングヒーターを見ながら声を掛ける。ナル「それにしても不思議な魔法具ですね、何の変哲のないただの板に鍋を置いていると熱くなってくるなんて見たことないですよ。普通は火属性魔法を薪に当てて火をつけるのですが・・・、これはあなたの魔力ですか?」 軽トラと同じでガスコンロ的なものを使うときにも魔力が必要らしい、やはり改めて思ったがこの世界は何をするにしても魔法が絡んでくるみたいだ。 そんなこんなでナルによる追加の朝ごはんが出来上がった、先程と打って変わって和食の朝ごはんだ。土鍋で炊
-⑨情報を得、入浴する- ガイが光の家を通り過ぎると情報を収集する時間にした、直近の情報は新聞以外なさそうだ。今朝、ナルがお試しとして持ってきた今朝の朝刊を見ることにした。1面にはネフェテルサの王族についての情報が記されていた。ただ、『どこかの北の国』みたいにずっと「~様万歳」的な文体が続いている訳では無かった。 2面を開いてみることにした、地域の物価や農作物についての情報が事細かに書かれている。どうやらご近所さんの畑で東京ドーム2個分位の大きさのキャベツと南瓜が取れたらしい、いや収穫する前から目立つだろうと誰もが突っ込みたくなる記事だった。 そう言えばこの世界の人たちは娯楽や趣味はどうしているのだろうか、周囲を見渡せば皆ずっと街での仕事や農業をしている人たちばかりで兎に角忙しいばかりの国なのかなと疑問に思いながら3面に移った。光「3面はテレビ欄・・・、テレビ欄?!テレビあんの?!」 その時インターホンの音がした、『御用の方はこちらのボタンを押してください』の札を立て掛けておいて正解だと思いながら玄関を開ける。光「はーい。」ネスタ「おっ、本当に来たね。これも魔法の1つかい?あたしゃ初めて見たよ。」 この世界にはいわゆる呼び鈴という者が無く用があれば大抵玄関の前で名前を大きな声で叫ぶことが多いらしい、ノックをする人はちらほらしかいないそうだ。光「ネスタ・・・、さん・・・、おはようございます。」ネスタ「おはよう、新居を見に来るついでに夕飯を作りに来てやったよ。」光「そうだ夕飯・・・。」ネスタ「ん?何か作っていたのかい?」光「実はカレーを仕掛けていたんです。」ネスタ「カレーかい、あたしも大好きだよ。」光「良かったら、明日食べに来ませんか?」ネスタ「どうして明日なんだい?」 どうやらこの世界ではカレーを1晩置くと美味しくなるという知識というより概念がならしい。一先ず出来上がったばかりの物をネスタに食べさせた、一応寸胴鍋で作ってあるから心配は無いのだが念の為光は普通の1人前の量で我慢し明日まで置いておくことにした。ネスタ「そう言えばこの家、銭湯からかなり離れているね。ずっとシャワーで過ごすつもりなのかい?」 そうだ、思い出した。ネスタの家には風呂が無く、入浴はどうしているのだろうかと疑問に思っていた所だった。ネスタによるとこの国の人はシ
-⑩異世界での初仕事- ネスタの家で光は朝8時に鳴るようにアラームを設定していた。起きれなかったら困るので設定しておいて正解だ、昨晩ネスタにやたらと飲まされたので少し2日酔い気味だ。異世界から来た新しい友人の事が嬉しかったのだろう。この世界では平均的らしいが思ったより酒が強い人達ばかりで戸惑った、因みに光は日本では強い方だったはずなのだが。 2日酔いを気にして酔い止めと胃薬を『作成』し、ゲオルの店で買っておいたペットボトルの水で流し込んだ。そこにネスタが光を起こしに来た。ネスタ「おはよう、朝ごはん出来てるよ。下に降りてきな。」光「あ・・・、おはようございます。」ネスタ「昨日は楽しかったね、今夜は楽しみにしているよ。」光「今夜・・・、何でしたっけ?」ネスタ「もう、自分が言い出した事も忘れたのかい?カレーだろ。」光「あ、ホントだ。」ネスタ「もう、あんたしっかりしなきゃだよ、今日から仕事なんだから。」 本当だ、今日からパン屋での仕事が始まるのだ。光は服を着替えネスタと朝食を取った、一汁三菜の和食。温かなおふくろの味。お出汁の効いた優しいお味噌汁が体に沁みる、それだけで白米が進む。そしてホカホカの焼き鮭が嬉しい。これぞ日本の朝ごは・・・、おっとここ日本じゃなかった。ネスタ「すまないね、今朝用事があって家まで送れそうにないんだ。」光「大丈夫です、まだ余裕がありますから。」 朝食を済ませ玄関でネスタに見送られた光はネスタに手を振って自分の家へと向かった、一目から目立たない場所に移動して。光「えっと・・・、『転送』が出来たから『瞬間移動』も『作成』出来るよね。」 光は両手を前に出しステータス画面を出した、そして『瞬間移動』スキルを『作成』して早速右手を前に出した。初めての『瞬間移動』だ。光「おお、こりゃ便利だわ。ただやっぱ人前じゃ目立つから普段使い用に車・・・、というか軽トラ買わなきゃね。」 この辺りの住民は主に軽トラに乗っている、乗用車は街の人間だけが乗るのでこの辺りではやはり目立つ。 農作物に水をあげると光は家を出た。街に移動し、大きなバケットの看板が良く見えるパン屋を目指した。 パン屋にはすぐ着いた、店長のラリーに裏にある従業員通用口、そしてスタッフルームへと案内された。スタッフルームでは個人用にロッカーが用意されており、そこに荷物を
-⑪大食いが役に立つ- 店長のラリーは聞き返した、身近に自分の事を大食いと自信満々に言う人がいる訳がないとずっと思っていたからだ。確かに大食いの番組はこの世界にあったりはするがそれもやらせやはったりの塊なのだろう、1人の人間が本当にあれだけの量を食べてしまう事を信じる事が出来なかった。 しかし、目の前の新人従業員は出来ると言い張っているのだ、よしそう言うなら試してやろう。丁度売れ残りのパンがかき集めたものがあったはずだ。ラリー「光・・・、そんなに言うなら俺が作った大食いメニュー、やってみるかい?」ローレン「店長、ウチそんなの無かっただろう、あたしゃここ長いけど見たことないよ。」ウェイン「まさかあの堅くなりかけてるパンを出すのか?」ラリー「ああ・・・、ただそのままでは出さない。これも以前から考えてた新作だ。無駄になりそうな食い物を可能な限り減らす方法を探してたんだ。折角だ、試しにやってみるさ。ウェイン、すまんが手伝ってくれ。光、食えなくても別に罰はない。こっちは一応売れ残りを出すんだからな、逆にもしも食えたら給料2倍だ。約束しよう。」ウェイン「ああ・・・、やってやるさ・・・。」 給料2倍・・・、別に金に困っている訳ではないけど(光の口座には1京円入っているため)、良い響きだ、心がうずうずしてくる。それに失敗しても何も問題なし、そんなの断る理由がどこにあるのだろうか!!!光「店長・・・、今すぐ持ってきて下さい!!!」 ラリーはその声を皮切りに厨房へと駆け込んで行き調理を始めていった、売れ残ったパンを細かく刻んでいく。その作業をウェインに任せると自分は大量のホワイトソースを作って行った。 刻んだパンをバターを塗った大きなグラタン皿に盛り、鶏もも肉の切り身やベーコンをラリー特製のホワイトソースやチーズをこれでもかと言わんばかりにかける。 最後にオーブンで焼いて大きなグラタンが完成した。ラリー・ウェイン「出来たぞ!!!食えるもんなら食ってみろ!!!」 直前まで通常通り接客の仕事を行っていた光を呼び出し光の前に出来立て熱々を提供した、店も丁度午前中の営業時間を終えたところだったので店にいた全員が光を見守った。光「いっただっきまーす!!!」 光は嬉しそうな顔で食べ始めた、熱々のグラタンが口の中に運ばれていく。光「おーいしいー!!!あっ、鶏肉とベ
-⑮カレーと驚きともうひとつの秘密と- ある朝、今日はパン屋の仕事も休みなのでゆっくり出来るなとうんと体を伸ばした。朝一でシャワーを浴び先日のカレーを食べようかと温めていく。スパイスの芳しい香りが部屋を包み光の空腹を誘う、涎を飲み込みながら皿に白飯をよそっているとインターホンが鳴った。カレーはお預けかなと思いながら玄関のドアを開けた、ネスタだ。何か忘れていたような気がするが何だったのであろうか。ネスタ「あーら、この前の約束忘れてたのかい。やだよ、熟したカレーをご馳走してくれるって言ってたじゃないか。」光「そうでした、丁度温めていたので良かったらどうぞ。」ネスタ「そう来なくっちゃね、頂くよ。」 光は米だけには拘りを持っていて家で食べる米は必ず新潟県魚沼産のコシヒカリと決めていた。異世界に来た今もその拘りは変わらず、念の為『作成』で作っておいてアイテムボックスに入れておいたのだ。その拘りのコシヒカリを皿によそってカレーをかける。 2人はテーブルに向かい合わせて座りカレーに食らいつきだした。ネスタ「うーん、本当に美味しいね。食が進んで匙が喜んでいるさ。」光「大袈裟ですよ、市販のカレールーを使ってますもん。」ネスタ「ゲオルさんのお店に売ってあるやつかい?」光「全体的に黄色のあれです。」ネスタ「リンゴと蜂蜜で有名なやつだね、あの辛口でないと旦那が食べないんだよ。」光「そう言えば私旦那さんにお会いした事無いですね。」ネスタ「あの人警察で働いてるからよく職場に呼び出されるんさ。」光「警察?!へぇ、そうなんですね・・・。」 そう言っているとインターホンが数回連続で鳴り響いた。勢いよくドアが開く、聞き覚えのある男性の声が響いた。男性「ネスタ、探したぞ!ここにいたのか、腹が減って死にそうだよ。」ネスタ「あんた、光ちゃんに失礼じゃないか!」男性「ああ、申し訳ない。腹が減っててつい。」光「林田さん?!何でここに?!」ネスタ「何言ってんのさ、うちの旦那じゃないか。私ネスタ林田だもん。」 思った以上に世間が狭すぎる、ご近所付き合いも大事にしないとなと改めて思った。そうこうしていた時、林田がお腹をさすりながら鼻をクンクンさせていた。林田「光さん、カレーですか。」光「・・・食べますか?」林田「ありがとうございます、カレー大好きなんです!!」 また
-⑭初めて会った日本人- 話を聞いているとどうやらこの林田という刑事、光と同じ経路でこの世界に転生してきたらしく、同様に神様からの色んなプレゼントをもらっていたらしい。言語も日本語に自動翻訳されていたので光の免許証も日本語のまま見えていたそうだ。林田「では、部下を待たせていますので失礼致します。」光「あの警部さん。」林田「林田で良いですよ、どうされました?」光「またお話しできますか?実は転生者は自分だけだと思っていたので不安だったんです。」林田「勿論、これが私の連絡先です。」 林田は光に名刺を渡した、携帯の番号とメールアドレスが記されている。こっちの世界で使う事は無いと思っていたので携帯と充電器はアイテムボックスにしまっていた。 林田たちが光の家を去った後、光は家庭菜園の雑草を取り除き水やりをして街に出かけて行った。遂に車・・・、というより軽トラを見に行くのだ。 軽トラ屋は街の入り口付近にあった、因みに乗用車は王都に行くと手に入るらしい。しかし、そこまで大きい車は必要ないしいざという時に農業の手伝いができたらという気持ちから光は軽トラを買う決心をしていた。 光は看板を見て後ずさりした。どこからどう見ても日本の国産車メーカーの看板に見える。ただよく見てみたら・・・。光「ス・・・、ズ・・・、タ?スズタなのね?ははは・・・、どこまで日本に寄せてんの・・・。」 そう呟きながら店に入った。普通の荷台が載っているタイプから緑色のほろが付いているもの、ダンプタイプなどの種類が揃っていた。ただどれも一律100万円と言うのだから驚きだ。 因みに皆が大抵軽トラを買うので軽トラ屋と呼ばれているだけで実は軽乗用車も無い事は無い。箱型のバンタイプのものもあるので選択肢は多い、ただそれらも全部100万円だそうなのだ。奥から店主が出てきて声をかけた。店主「いらっしゃい、どのような物をお探しで?」光「荷物が沢山乗るものを思ったので軽トラが良いかなと思ったんですが・・・、どれも一律価格なんですね。」店主「その方が分かりやすいでしょ、ハハハ・・・。」 まさかの理由に光は顔が引きつっていた。 気を取り直して車を見よう、今思えば軽トラだと雨の時に困る。ではほろが付いている物にしようか、いやそれだとバックの時後ろが見えづらい。ダンプタイプは・・・、正直いらない機能だ。箱
-⑬無知からの脱却- 隣国の王が共通で言っていた『一刻を争う』問題とは何なのだろうか、正直恥ずかしくて聞く勇気がない。周りを見ると国の街の全員が知っているみたいで光にとってはむしろこの事が一刻を争う問題となっていた、パン屋で仕事している時もミーシャとラリーが深刻な表情で話し合っていたので自分も早くニュースを見える環境にしなくてはと仕事が終わると一目散に家路を急いだ。因みに今日は半休だ。 家に帰るとすぐにテレビの電源を入れた、相変わらず日本のテレビ放送が流れている。光はこの世界のテレビ放送を見る為にチャンネルを再登録する事にした。光「えっと・・・、放送スキャンは・・・、これか。」 家電の操作や設定は得意な方で自分一人でやってのけてしまう事が多く、今回はその特技が生かされ助かった。 放送スキャンをやり直しても何故か日本の放送が受信されるようになっている、ただ数チャンネルほど追加されていてそれがこの世界のテレビ放送だとすぐに理解できた。見える放送局の選択肢が多いので助かる、神様のお陰だなと笑みを浮かべた。 そうこうしているうちにニュースの時間となったみたいだ。キャスター「こんにちは、この時間のニュースをお知らせいたします。」 最初は隣国の王がこの国を会合の為に訪問している事だった。映像もはっきりと残されているが撮影クルーっぽい集団は見かけなかった。まぁ、たまたまだろうと光は受け流した。 次は雨不足で野菜の不足が目立ち、市場価格が高騰傾向にあると報じられていた。確かに市場で見かけた野菜は日本にいた時より少し高かった気がする、家庭菜園を始めて正解だ。後で野菜たちの様子を水やりがてら見に行ってみよう。 最後に隣国と共通して起こっている問題なのだが最近町はずれの山々で走り屋による騒音問題があるらしい。そう言えばネスタと銭湯に行った時道路にタイヤ痕が数か所あったような・・・、ただこの辺りの人たちは農耕用の軽トラに乗っている人達がほとんどで乗用車はちらほらとしか見かけず、走り屋仕様の車は全く見かけない。別の街からわざわざ走りに来ているのだろうか、暇な人もいるんだなと光はコーヒーを啜った。きっと国王同士が会合で話し合っているのはこの事なのだろうと思っていた時、インターホンが鳴った。玄関を開けるとそこには警官らしき男性が2名立っていた。光に罪を犯した覚えはない。
-⑫突然の訪問- 朝一、光が残っているカレーを一人前食べ保存容器に入れてからパン屋の仕事に向かっている頃、街中の様子が慌ただしくなっていた。その様子は少なくとも催し物での盛り上がりとは全くもって違っていた。市場は片付けられお店は閉店していて街の真ん中では国旗のデザインが描かれたテントが四方に張られていた、光は騒ぎの中にラリーとゲオルを見つけたので話しかけることにした。ゲオル「もうすぐご到着みたいですよ。」ラリー「早く済まさなくてはいけませんね。」光「ゲオルさん、店長、おはようございます。」ゲオル「光さん、おはようございます。」ラリー「おはよう、丁度良かった、人手を探してたんだよ。」 何かただ事では無い事が起ころうとしているのだという事は光にも理解できたが、正直言って何が何だか分からなかった。一先ず、自分に出来る事は無いかと尋ねた。ラリー「店に荷物を置いてきてあっちのテーブルの準備を手伝ってやってくれ。」 ラリーが指差したテーブルでネスタやパン屋で働く女性陣が料理の準備をしている。見回してみるとどうやら中華料理から構成されたメニューになっているらしい、それも豪華な物ではなくいわゆる『町中華』の中華料理だ。光「おはようございます、何があるんですか?」ネスタ「あっ、光ちゃん、おはよう。あたしらもさっき聞いたばっかりなんだけどね、王族の方々が街に来るみたいなんだよ。今日はこういった料理が食べたいって今朝文が来たみたいでね、初めて作る料理ばかりで大騒ぎさ。」光「でもどうやってここまで作ったんですか?」ミーシャ「文にレシピが載っていたからその通りに作ってみたんだけど、あんたこの料理知っているかね。」光「私の祖国でもちょこちょこ食べる料理ですけど。」ドーラ「助かりました、申し訳ないんですがお願いがあるんです。」光「私で良ければ。」ドーラ「料理が出来てきたのは良いんですけど、私たちが食べたことない物ばかりなので味が大丈夫なのか不安でして・・・。」 言ってしまえば試食を頼みたいとの事だった、光は今朝カレー1人前しか食べていないので丁度お腹が空いてしまっていた。鍋やフライパンには炒飯や天津飯といったご飯ものを中心に餃子や春巻きなどの天心、麻婆豆腐、青椒肉絲、そして杏仁豆腐といったラインナップ。王族は何人来るのだろうか、結構量があるので相当な人数だろ
-⑪大食いが役に立つ- 店長のラリーは聞き返した、身近に自分の事を大食いと自信満々に言う人がいる訳がないとずっと思っていたからだ。確かに大食いの番組はこの世界にあったりはするがそれもやらせやはったりの塊なのだろう、1人の人間が本当にあれだけの量を食べてしまう事を信じる事が出来なかった。 しかし、目の前の新人従業員は出来ると言い張っているのだ、よしそう言うなら試してやろう。丁度売れ残りのパンがかき集めたものがあったはずだ。ラリー「光・・・、そんなに言うなら俺が作った大食いメニュー、やってみるかい?」ローレン「店長、ウチそんなの無かっただろう、あたしゃここ長いけど見たことないよ。」ウェイン「まさかあの堅くなりかけてるパンを出すのか?」ラリー「ああ・・・、ただそのままでは出さない。これも以前から考えてた新作だ。無駄になりそうな食い物を可能な限り減らす方法を探してたんだ。折角だ、試しにやってみるさ。ウェイン、すまんが手伝ってくれ。光、食えなくても別に罰はない。こっちは一応売れ残りを出すんだからな、逆にもしも食えたら給料2倍だ。約束しよう。」ウェイン「ああ・・・、やってやるさ・・・。」 給料2倍・・・、別に金に困っている訳ではないけど(光の口座には1京円入っているため)、良い響きだ、心がうずうずしてくる。それに失敗しても何も問題なし、そんなの断る理由がどこにあるのだろうか!!!光「店長・・・、今すぐ持ってきて下さい!!!」 ラリーはその声を皮切りに厨房へと駆け込んで行き調理を始めていった、売れ残ったパンを細かく刻んでいく。その作業をウェインに任せると自分は大量のホワイトソースを作って行った。 刻んだパンをバターを塗った大きなグラタン皿に盛り、鶏もも肉の切り身やベーコンをラリー特製のホワイトソースやチーズをこれでもかと言わんばかりにかける。 最後にオーブンで焼いて大きなグラタンが完成した。ラリー・ウェイン「出来たぞ!!!食えるもんなら食ってみろ!!!」 直前まで通常通り接客の仕事を行っていた光を呼び出し光の前に出来立て熱々を提供した、店も丁度午前中の営業時間を終えたところだったので店にいた全員が光を見守った。光「いっただっきまーす!!!」 光は嬉しそうな顔で食べ始めた、熱々のグラタンが口の中に運ばれていく。光「おーいしいー!!!あっ、鶏肉とベ
-⑩異世界での初仕事- ネスタの家で光は朝8時に鳴るようにアラームを設定していた。起きれなかったら困るので設定しておいて正解だ、昨晩ネスタにやたらと飲まされたので少し2日酔い気味だ。異世界から来た新しい友人の事が嬉しかったのだろう。この世界では平均的らしいが思ったより酒が強い人達ばかりで戸惑った、因みに光は日本では強い方だったはずなのだが。 2日酔いを気にして酔い止めと胃薬を『作成』し、ゲオルの店で買っておいたペットボトルの水で流し込んだ。そこにネスタが光を起こしに来た。ネスタ「おはよう、朝ごはん出来てるよ。下に降りてきな。」光「あ・・・、おはようございます。」ネスタ「昨日は楽しかったね、今夜は楽しみにしているよ。」光「今夜・・・、何でしたっけ?」ネスタ「もう、自分が言い出した事も忘れたのかい?カレーだろ。」光「あ、ホントだ。」ネスタ「もう、あんたしっかりしなきゃだよ、今日から仕事なんだから。」 本当だ、今日からパン屋での仕事が始まるのだ。光は服を着替えネスタと朝食を取った、一汁三菜の和食。温かなおふくろの味。お出汁の効いた優しいお味噌汁が体に沁みる、それだけで白米が進む。そしてホカホカの焼き鮭が嬉しい。これぞ日本の朝ごは・・・、おっとここ日本じゃなかった。ネスタ「すまないね、今朝用事があって家まで送れそうにないんだ。」光「大丈夫です、まだ余裕がありますから。」 朝食を済ませ玄関でネスタに見送られた光はネスタに手を振って自分の家へと向かった、一目から目立たない場所に移動して。光「えっと・・・、『転送』が出来たから『瞬間移動』も『作成』出来るよね。」 光は両手を前に出しステータス画面を出した、そして『瞬間移動』スキルを『作成』して早速右手を前に出した。初めての『瞬間移動』だ。光「おお、こりゃ便利だわ。ただやっぱ人前じゃ目立つから普段使い用に車・・・、というか軽トラ買わなきゃね。」 この辺りの住民は主に軽トラに乗っている、乗用車は街の人間だけが乗るのでこの辺りではやはり目立つ。 農作物に水をあげると光は家を出た。街に移動し、大きなバケットの看板が良く見えるパン屋を目指した。 パン屋にはすぐ着いた、店長のラリーに裏にある従業員通用口、そしてスタッフルームへと案内された。スタッフルームでは個人用にロッカーが用意されており、そこに荷物を
-⑨情報を得、入浴する- ガイが光の家を通り過ぎると情報を収集する時間にした、直近の情報は新聞以外なさそうだ。今朝、ナルがお試しとして持ってきた今朝の朝刊を見ることにした。1面にはネフェテルサの王族についての情報が記されていた。ただ、『どこかの北の国』みたいにずっと「~様万歳」的な文体が続いている訳では無かった。 2面を開いてみることにした、地域の物価や農作物についての情報が事細かに書かれている。どうやらご近所さんの畑で東京ドーム2個分位の大きさのキャベツと南瓜が取れたらしい、いや収穫する前から目立つだろうと誰もが突っ込みたくなる記事だった。 そう言えばこの世界の人たちは娯楽や趣味はどうしているのだろうか、周囲を見渡せば皆ずっと街での仕事や農業をしている人たちばかりで兎に角忙しいばかりの国なのかなと疑問に思いながら3面に移った。光「3面はテレビ欄・・・、テレビ欄?!テレビあんの?!」 その時インターホンの音がした、『御用の方はこちらのボタンを押してください』の札を立て掛けておいて正解だと思いながら玄関を開ける。光「はーい。」ネスタ「おっ、本当に来たね。これも魔法の1つかい?あたしゃ初めて見たよ。」 この世界にはいわゆる呼び鈴という者が無く用があれば大抵玄関の前で名前を大きな声で叫ぶことが多いらしい、ノックをする人はちらほらしかいないそうだ。光「ネスタ・・・、さん・・・、おはようございます。」ネスタ「おはよう、新居を見に来るついでに夕飯を作りに来てやったよ。」光「そうだ夕飯・・・。」ネスタ「ん?何か作っていたのかい?」光「実はカレーを仕掛けていたんです。」ネスタ「カレーかい、あたしも大好きだよ。」光「良かったら、明日食べに来ませんか?」ネスタ「どうして明日なんだい?」 どうやらこの世界ではカレーを1晩置くと美味しくなるという知識というより概念がならしい。一先ず出来上がったばかりの物をネスタに食べさせた、一応寸胴鍋で作ってあるから心配は無いのだが念の為光は普通の1人前の量で我慢し明日まで置いておくことにした。ネスタ「そう言えばこの家、銭湯からかなり離れているね。ずっとシャワーで過ごすつもりなのかい?」 そうだ、思い出した。ネスタの家には風呂が無く、入浴はどうしているのだろうかと疑問に思っていた所だった。ネスタによるとこの国の人はシ
-⑧食料を得る- 新聞屋は光の必死な顔に少し引き気味だった、光はかなり強めに新聞屋の腕に掴んでいる。新聞屋は後ずさりしながら光に告げた。新聞屋「わ・・・、分かりました。一旦店に戻ってきます。タイムカードを押してこないといけませんので。すぐに戻って来ますからちょっと待っ・・・。」光「早く・・・・、早くしてください!!!お腹が空いて我慢できそうにありません!!!」新聞屋「やたら大きな魔力保冷庫(冷蔵庫)があったのはそういう理由だったのですね、分かりましたから手を放してください!!!」 ナルと名乗ったその新聞屋は逃げる様に光の家を出て店に急いだ。流石に大食いだからって女性1人で大鍋に並々入ったコンソメスープをすぐに平らげることは無いだろう、ただ急ぐしかない、それがナルに残る唯一の選択肢だった。 光はナルが家を出た後、一心不乱に鍋のスープを食べた。こんなに温かく優しい味のスープは久々だ。落ち着いてイングリッシュマフィンをもう1個焼こう、スープにつけたらぴったりだ。オーブントースターの電源をいれ、テーブルのスープに戻る。やはり美味しい、光は夢中になって食べた。光「美味しすぎる・・・、ナルさん・・・、本当に新聞屋さんなの?!」 鍋のスープが底を尽き、光は椅子にもたれた。その瞬間ナルが家に必死の形相で入って来た、空っぽになった鍋を見て開いた口が塞がらない。ナル「急いで何か作ります、待っててください!!!」光「は・・・、やく・・・、お・・・、腹・・・、が空い・・・、て・・・、死に・・・、そう・・・。」 ナルは急いでエプロンを締め米を研ぎ始めた、土鍋に米を流し込みつけ置きをする。その間に鍋いっぱいの水に昆布と鰹節を入れて出汁を取る、アジの干物を魚焼きグリルに入れると火をつけた。IHクッキングヒーターを見ながら声を掛ける。ナル「それにしても不思議な魔法具ですね、何の変哲のないただの板に鍋を置いていると熱くなってくるなんて見たことないですよ。普通は火属性魔法を薪に当てて火をつけるのですが・・・、これはあなたの魔力ですか?」 軽トラと同じでガスコンロ的なものを使うときにも魔力が必要らしい、やはり改めて思ったがこの世界は何をするにしても魔法が絡んでくるみたいだ。 そんなこんなでナルによる追加の朝ごはんが出来上がった、先程と打って変わって和食の朝ごはんだ。土鍋で炊
-⑦本格的な生活と光の秘密- 店主は周りを見回して光に聞いた。店主「そう言えば家財道具や家具はどうされるのですか?何なら当店で揃えさせて頂きますが。」 『作成』で作ったり日本のものを『転送』しようと思っていたから何も買っていない。光「注文しているものがもうすぐ届く予定でして、足らないものは作ってみたりしようと思います。」店主「ご自分でですか?!」 店主はかなり驚いている様だが日本にいたときはDIYにハマっていた時もあるので問題ない。 店主と別れると光は『転送』スキルを使用し日本にある自分の家具や家財道具、そして家電を新居に設置した。光「さてと・・・。」 光は屋根に登り巨大なソーラーパネルを2枚『作成』し設置した。先ずは雨の日の為に蓄電池を取り付け、家の中に配線を通した。コンセントも『作成』して設置する。電灯は可能なかぎり蠟燭の明かりに色を合わせたものを選んだ以外は日本から持ってきた家電をコンセント繋げた、一先ず日本から『転送』した大きめの業務用の冷蔵庫の電源を入れ蓄電池に電力が貯まるまでとりあえず街の中で食料を中心に買い物を行う事にした。埋め込んだソーラーパネルに合わせて屋根の色は黒に塗って蓄電池は木箱に隠す、これで目立つことはないだろう。 市場で新しく仕入れた食料を冷蔵庫に詰め込むと、元々冷蔵庫に入っていた食料の鮮度等を確かめた。明日使えば何とかなるものも含め全て大丈夫そうだ。 さあ、光の本格的な「特に何もしない異世界生活」の始まりだ。光「さて、これから本格的な異世界生活の始まりだ、やるぞー!」 次の日、今日から新居での新生活の始まりだ。光は朝イチのモーニングルーティンの1つにしている朝シャンを済ませ洗濯機を回し、IHクッキングヒーターでハムエッグを作りオーブントースターでイングリッシュマフィンを焼くことにした。香ばしい香りが部屋を包む、因みに光はパン類はカリカリサクサクと音がするまでしっかり焼く派だ。 一先ず今朝のニュースを確認する事にした、昨日家電を設置した時に調べたのだが奇跡的にテレビ放送は受信できるらしく、光は助かっていた。 光は朝のニュースを確認する事にした、ただ日本の放送を受信しているのだ、日本のニュースが当然の様に流れる。そう言えばここの人間は情報をどうやって共有しているのだろうか。新聞・・・、的なものがあるのだろうか