第464話

　その声に聞き覚えがあった。

恭平は体を硬直させて振り向いた。

そして、少し離れたところに立っている男を目にした。

「俺から言わせれば、こうやっていつも他人の悪口を陰で言って、わざと貶めたり中傷したりする奴こそが卑劣じゃないか？水原様は確かに短気かもしれないが、少なくともお前より男らしいぞ！」越人は圭介から指示された仕事をこなしに行こうとしていたが、ちょうど会社の門を出たところで、恭平が圭介を酷評するのを耳にしたのだ。

その発言は彼の常識を覆すものだった！

「恭平、男なのに、なんでまるでお喋りのおばさんみたいに振る舞うんだ？お前が水原様ほど仕事が上手くいかない理由、わかってるか？」

越人は無意識にこう問いかけた。「なんでだ？」

口にした途端、彼は後悔した。

これではまるで、自分が圭介に劣っていると認めているようなものじゃないか？

反論しようと思ったその瞬間、越人が口を開いた。「お前が卑劣で陰湿、学も品もなく、恥知らずで、せせこましくて、無知で愚かだから」

恭平は息を荒くし、怒りに震えていたが、すぐに反論する言葉が見つからなかった。「越人、てめえ、クソでも食ったか？」

「俺はただお前が言ったことをそのまま返しただけだよ。クソを食ったかどうかは、お前自身に聞けばいい」越人は冷たく鼻で笑うと、「俺には、お前みたいな暇人と無駄に時間を使ってる余裕はない」

そう言い放つと、越人は大股で去っていった。

「……」恭平は言葉を失った。

あの野郎……

待って……

電話を切っていないんじゃないか？

そうだ、確かに切っていない。

香織は、全部聞いていたのか？

どうしよう！？

今すぐ壁に頭をぶつけたい気分だった。

彼はゆっくりと携帯を手に取り、画面を見ると、通話中の表示がされていた……

つまり、自分と越人のやり取りはすべて香織に聞かれていたということだ。

これでは自分のイメージが台無しだ！

なんて無様な姿を見せてしまったのか！

彼は自分の頬を叩きたい衝動に駆られた。

どうして圭介の会社の門前で、香織に電話をかけてしまったんだろう。越人みたいなやつに聞かれて、これ以上の災難はない。

恭平は声を整えて、再び携帯を耳に当てた。「香織、あの……さっきの声、聞こえてなかったよね？」

香織は全てをしっかりと聞いていた。彼女は微笑みながら答えた。「