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第454話

 越人はこっそりと圭介を窺った。

田中愛美が乱入してきたら、彼はどう対処するのだろうか?

何しろ、この愛美は彼の異父妹なのだから。

しかし、圭介は微動もせず、冷淡にその様子を見ていた。

「……」越人は言葉を失った。

そんなにも冷酷なのか?

正直、彼がこの妹を認めればいいのに。そうすれば孤独な身の上でなくなるだろうに。

越人は心の中でそう考えていた。

「あなたが水原圭介ね?あなたのことを調べた。写真も見たわ。綾香はあなたの母親であり、私の母親でもあるの。だから、彼女のお墓の場所を教えてちょうだい。参拝したいの」愛美は圭介から少し離れた場所に立ち、強い口調で言った。

その勢いは、圭介が答えなければ彼女が引き下がらないかのようだった。

圭介は目を上げて秘書を見た。「警備を呼んでくれ」

秘書は内心小さな興奮を覚えた。「承知しました」

「何をするつもり?」愛美は目を見開いて叫んだ。「私は綾香の娘よ!」

秘書が冷静に応じた。「誰であろうと、許可なく押し入るのは間違いです」

その時、警備員たちがやって来た。秘書は容赦なく言った。「彼女を連れ出して」

香織が亡くなって以来、秘書は圭介の周りに新しい女性が現れることを望んでいなかった。

彼女は、自分こそが香織の代わりになれる人間だと考えていた。

だから、女性が現れれば、彼女は警戒し、追い出すのだ。

愛美は警備員に押さえられた。

「ちょっと……圭介!」愛美は諦めずに叫んだ。「母さんはあなただけのものじゃないわ。独り占めしないで!」

秘書は警備員に目配せし、「早く」と指示した。

愛美はエレベーターに押し込まれ、声は次第に遠のいていった。

オフィスは静けさを取り戻した。

圭介はこの件に明らかに不満を抱き、「どうして彼女がここに上がってこれた?」と問いただした。

越人はまた何かをしなければならないと悟った。

「セキュリティを強化し、今後は見知らぬ人間が入らないようにします」越人はすぐに答えた。

圭介は冷たい表情のままで、彼の回答に満足していないようだった。

越人は唾を飲み込んで、「彼女を送り返す手配をします」と言い、急いでその場を立ち去った。

秘書は彼の言葉を聞いて内心で小さく喜んだ。

しかし、喜びは一瞬で終わった……

「出て行け」圭介の冷たい声が響いた。

秘書はうつむいてオフィス
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