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第459話

 恭平は彼女の胸にかかっている名札を手に取って確認した。「Jane?」

彼は少し驚いた。「まさか本当に君だったとは。君がメッド研究所の人だなんて、ちょうど行き詰まっていたところだったんだ」

自分の眼力に感心せざるを得なかった。。彼女はマスクをしていたのに、自分は彼女だと見抜いたのだ。

実は、恭平は圭介が全人工心臓に投資する可能性があるという情報を手に入れ、メッド研究所から人材を引き抜こうと計画していた。

圭介が手がけたことはこれまで一度も失敗したことがない。

だから、彼は圭介に先んじて研究員を引き抜き、自ら投資して全人工心臓の開発を進めたいと考えていた。

しかし、この分野に関してはまったくの素人であり、知り合いすらいなかった。

そんな中、彼はここに来たものの、門前払いを食らい、まるで愚か者のように立ち尽くしていた。

だが、門の外をうろついていた時に香織を見つけた。

彼はまるで溺れかけていたところに救命ロープを掴んだかのように、彼女を頼りにしようとした。

「俺と一緒に来い」恭平は彼女の腕を引っ張った。

「……」香織は戸惑いながらも、手すりにしがみついた。

恭平は振り返り、彼女を見つめた。

彼女の目と額を見て、その容貌が……

「香織か?」

彼が思わず口に出したその名前は、意図せず彼の心の中に浮かんでいたものだった。

彼は無意識に名前を口にしたが、それは香織に大きな衝撃を与えた。

彼女は焦って逃げようとしたが、その慌てた様子は恭平に見逃されることなく、彼は彼女が何かを恐れていることに気づいた。

「お前、一体何者なんだ?」恭平は彼女のマスクを引き剥がし、彼女の首や顔にある傷跡を見つめた。

その傷は……

やけどか?

香織は爆発で死亡したはずだった。

全身は原形をとどめないほどに損傷していたはずだが……

「お前は……」

彼は目の前の光景に衝撃を受け、言葉を失った。

同じく火傷の痕だ。

「……お前は死んでなかったのか?」

香織はうつむき、英語で言った。「あなたは人違いをしていると思います」

彼女は強く抵抗したが、恭平はさらに彼女をしっかりと掴んだまま離さなかった。

「前は俺に日本語で話していただろう。今は英語か?それはわざと隠している証拠だろう?」恭平は彼女を鋭く見つめた。「さっきお前はとても怯えていた。本当に他人なら、な
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