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第453話

 圭介は高所から、まるで虫けらを見るかのように幸樹を見下ろし、「言っただろう、お前を生き地獄にしてやると」

幸樹は地面に這いつくばり、憎しみに飲み込まれそうになっていた。

彼の両手は激しく震え、手の甲の血管が浮き出ていた。

同じ姓を持ちながら、幸樹は自分の惨めな姿をどうしても受け入れられなかった。一方で、圭介はまるで王者のように高みに立っている。

負けを認めたくない。

しかし、今回も完敗だ。

幸樹はよろよろと立ち上がり、顔を歪めながら叫んだ。「圭介、怖いんだろう?俺を殺す度胸がないんだ!お前なんか男じゃない!やれるもんならやってみろ、俺に軽蔑されないようにな」

言い終わると、彼は圭介に突進しようとしたが、動き出した瞬間、誰かに抑えられた。

「薬を注射する時間です」院長が言った。

幸樹は抵抗した。

だが、力が足りなかった。

彼はここに閉じ込められてからというもの、毎日薬物を注射されていた。

その薬は筋肉を萎縮させ、全身の力を奪うもので、自ら命を絶つことすら許されなかった。

薬を打たれると、彼は力なく地面に投げ捨てられた。

誰も彼が逃げることを心配していなかった。

まず、彼に力は残っておらず、さらに体内には追跡装置が埋め込まれているのだ。

彼に逃げ場はない。

死にたくても死ねない。この苦しみは、まさに「生き地獄」という言葉そのものだ。

幸樹は頭を仰け反らせ、冷たく笑った。「圭介、お前は勝ったつもりか?香織が死んで、お前は一生苦しむんじゃないのか?ハハハ……」

彼は狂気に満ちた目をしながら続けた。「俺はあらゆる手を使ったんだ。憲一の結婚式にまで潜り込んで、サービス係に彼女にメモを渡させて、彼女を騙して捕まえようとしたが、失敗した。だから、次はお前たちの子供に狙いを定めたんだ。そしたら成功した。俺は香織を捕まえたんだ。今はお前に抑え込まれているが、俺は何も失っていない。香織の命を奪ったからな」

幸樹は圭介をじっと見つめた。「お前がいない間に手を出すなんて、本当に手っ取り早いな」

「香織」という名前を聞くたびに、圭介の瞳は抑えきれずに暗く沈んだ。

憲一の結婚式でメモを渡したのはこいつだったのか?

自分が油断していたせいだ。

もっと警戒していれば、もしかしたら香織は……

圭介は背を向けた。

「こいつの声をもう聞きたくない」

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