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第226話

 水原爺がいつの間にか船に乗っており、ちょうど彩花が香織を打とうとしているところを目撃した。彼はすぐに声をかけて止めた。

 彩花は振り返り、水原爺を見た。

 あの日、病院で幸樹が彼に対して恭しい態度を取っていたことから、彼の身分の重要性が分かった。

 そのため、彼女の手は振り下ろせず、仕方なく幸樹の後ろに下がった。

 水原爺は杖をついて歩いてきて、

幸樹に向かって言った。「わしと一緒に来い」

 幸樹は年下として、当然拒むことはできなかった。彼は立ち去る前に部下に一瞥を送り、香織を見張るよう指示し、この隙に逃げないようにした。

 部下は理解し、香織を捕まえた。

 コンテナの前に立つと、水原爺は幸樹を見つめ、「今すぐ子供と香織を解放れば、まだ間に合う……」と言った。

 「おじいさま、何がまだ間に合うというのですか?」幸樹は水原爺の言葉を遮り、逆に質問した。

 答える前に、彼はまた先に言った。「あなたは圭介を説得できると思いますか?」

 水原爺の表情は次第に暗くなった。

 「今解放すれば、彼を説得できる。わしがまだ生きている限り、彼は私の顔を立ててくれるだろう」と水原爺は言った。

 幸樹は首を横に振った。「おじいさま、私の父もあなたの息子ですし、私もあなたの孫です。しかし、水原家の全ての財産を圭介に譲りました。おじいさま、あなたはあまりにも偏っていませんか。私が不満を抱き、争うのもあなたのせいです」

 金次郎は見かねて言った。「旦那様が財産を圭介に渡したのは……」

 「金次郎」水原爺は彼の言葉を遮った。「君がそう決めたら、わしも何も言うことはない。その結果、君が自ら背負うべきだ」

 「当然、私は自分で背負います!」幸樹は自分が何をしているのかよく分かっていた。そして、成功するか失敗するか、その結果も自分で受け止めるつもりだった。

彼が自分で行ったことは、決して逃げない。

「それならば、わしも言うことはない」水原爺は杖をついて外に出ようとしたが、金次郎は水原爺が幸樹に彼の母親がしたことを言わない理由が分からなかった。「旦那様……」

「もう言わないでくれ」水原爺は手を振り、彼に言わないように合図した。

金次郎は黙るしかなかった。

船を降りた後、金次郎は自分の疑問を口にした。「旦那様、あなたが船に乗ったのは、子供の居場所を探すためではな
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