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第9話

父は母と同じ種類の人間だった。ただ、彼は多少控えめであるだけで、根本的には心のない人間だ。

兄はゆっくりと父のそばへ歩み寄り、肩に手を回して言った。「父さん、もし本当に雪奈に申し訳ないと思っているなら、俺たちも一緒に彼女に詫びに行こうじゃないか」

その言葉に、私は思わず驚き、父もまた信じられないといった表情で兄を見つめた。「京介、お前......」

兄は父に微笑みかけると、どこからか取り出したハサミを父の腹部に突き刺した。

父は腹部を押さえ、驚きと痛みに目を見開きながら「お前......」と呟き、その場に崩れ落ちた。

母はその光景に悲鳴を上げ、驚愕の表情で兄を見つめていた。地面から慌てて立ち上がると、兄を睨みつけた。

「京介......雪奈ごときのために父親を殺すなんて、お前は正気じゃない!」

兄は無言で、父の腹部に刺さったハサミを引き抜き、一歩一歩母に向かって近づいていった。

母は怯えて後退しようとしたが、足が小夏に捕まれて動けなくなった。

母は必死に小夏の手を蹴りつけながら叫んだ。「小夏、離しなさい!京介は狂っているわ。まさかお前までおかしくなったの?」

小夏は俯いたまま笑みを浮かべ、「その通りよ、私ももう狂ったの。ずっとあんたにはうんざりしてたわ。偽善者で、横暴で......

長い間、雪奈だけが苦しんでたと思ってるの?私だって耐えてきたのよ。あんたなんか、死んで当然だわ」

兄は母に一歩一歩近づき、母は必死に小夏を蹴りつけて逃れようとしたが、小夏は決して手を離さなかった。

普段は弱々しい小夏が、今日ばかりは驚くほど力強く、母の激しい蹴りにも耐え抜いていた。

兄は母の前で足を止め、顔を上げて母を見つめた。

その目には、陰鬱で凶悪な光が宿っていた。「あのとき俺は言ったはずだ。雪奈の命だけは奪わないでくれれば、俺も見て見ぬふりをすると。

なのに、どうしてあの子を殺した?」

母は恐怖で首を振り、「私じゃないわ......私じゃない、雪奈が死んだのは小夏のせいよ。聞いたでしょ、雪奈は小夏を助けようとして死んだのよ。私には関係ないわ!」

兄は一瞬小夏の傷だらけの顔に目をやり、冷ややかに鼻で笑った。「一人も逃がさないと言ったはずだ」

そして、兄は父を殺したそのハサミを再び構え、母の心臓に突き刺した。

母は苦痛に顔を歪め、何かを言おうと口
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