第309話

私の全身が硬直した。

驚きと戸惑いが混ざり合っていた。

おそらく、別れがあまりにも体面を欠いていたから、何度も困惑させられたことがあったから、私は彼と離婚後も冷静に会話をすることができなかった。

私たちの関係の最終的な定義は、もう会えない二人だった。

お互いに人生に余計な煩わしさを加えないことだった。

気を引き締めて無表情で彼を見つめ、尋ねた。「どうして来たの？」

「俺は......」

江川宏は指先でタバコの燃えかすを叩き落とし、冷たい表情の中にかつての温もりが垣間見えた。「君を探しに来た」

「何のために？」

私は戸惑った。

破産して、私のことを思い出したのか？

江川宏の視線は真剣で、低い声で言った。「君と仲直りするために。南、もう後ろめたいことはない。安心して江川家の奥さんでいてくれ」

「......」

その言葉に一瞬驚いた後、次第に腹立たしさが込み上げてきた。

彼は私を何だと思っているのだろう？まだ離婚前だと思っているのか、彼がかつての光であると思っていたのか？

彼が手を振ると、私は去り、もう一度手を振ると、また戻ってくると思ってたか。

そう思うと、少し苛立ちが湧いてきて、口から出た言葉にも棘があった。「破産したから、藤原星華が婚姻を望まなくなったから、私のことを思い出したの？」

彼は一瞬驚いた後、耐えながら説明を始めた。「南、前の全てのことを説明......」

「説明なんてどうでもいい」

私は我慢できずに彼の言葉を遮り、口を滑らせた。「私たちの問題は、あなたと藤原星華の婚姻だけではないの。彼女が現れる前に離婚したわけではないでしょう？」

江川宏のまつげがわずかに下がり、いつも高い地位にいる人が優しい言葉をかけてきた。「分かってるよ。君が好きな人は山田時雄だと思っていた。俺じゃないって」

「あなたが誤解したのじゃない」

私は冷たく笑い、どこに刀を刺すべきかを知っていた。「もし私が初めから助けてくれたのが山田先輩だと知っていたら、彼を好きにならなかったかもしれないが、絶対にあなたを好きにはならなかった」

誤解があったからこそ、私は錯覚を抱いた。

彼が心に柔らかさを持っている人だと思い込んでしまったんだ。

江川宏の大きな体が一瞬固まり、黒い瞳で私をじっと見つめ、明らかに慌てている様子が見えた。「それなら、君はあの出来