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第313話

私は一瞬、驚愕した。

瞬時に江川宏の今の身分を推測したが、信じることができなかった。

彼は破産したはずなのに。

実際には、逃げ道を作ったか......

更に、今の彼はより強力な権力を手に入れていた。

最初の反応は慌てだった。

自分が彼と断絶したと思っていたのに、今や彼は自分の会社の最大の株主だったのか。

心の中にはまだ一筋の希望が残っていた。彼はただ山名佐助と親しくなり、一緒に視察に来ただけだろうと。

山名佐助が笑顔で紹介した。「清水社長、河崎社長、こちらがRFグループの新......新任常務執行役員、江川社長です」

紹介された地位は山名佐助より一段階低かった。

しかし、山名佐助は常に江川宏の後ろにいるようで、話すときの体の動きがそれを否定した。

彼らが南希の大株主である以上、私はここで面目をつぶしたくなかった。だから微笑みを浮かべ、尋ねた。「そうですか?裏の大ボスは来ると言っていましたが、どこにいるのですか?」

山名佐助は苦笑いしながら、答えた。「実は、彼は急用ができて......」

「わかりました」

私はこれ以上追及することはしなかった。河崎来依も問題を察知したが、長年の連携で一瞬で合意した。まずは表面的なことを処理しよう。

一行は大勢で会議室に入り、形式的な会議を開いた後、山名佐助が他の人々を退席させた。

その後、河崎来依に向かって言った。「河崎社長、あなたのデザイン部を見せてもらってもいいですか?」

その意図は明白だった。

「山名社長、南はデザイン部のディレクターですから、彼女の方が詳しいです......」

河崎来依は私がここに残って江川宏と二人きりになるのを不安に思い、すぐに断ろうとした。

私は江川宏の落ち着いた顔を見て、口を挟んだ。「来依、山名社長を連れて行って。私は江川社長に聞きたいことがいくつかあるから」

言いたいことは言わなければならない。私はこれ以上引き延ばすつもりはなかった。

「南......」

河崎来依は一瞬ためらったが、私の意志が固いのを見て、彼女はもう抵抗せずに山名佐助を連れて出て行った。

一瞬、オフィスには私と江川宏だけが残った。

彼の視線は私に真っ直ぐ向けられ、何も言わず、私の口から出るのを待っていた。

無意識に、彼が全ての主導権を握っているような気がした。

私は不安に駆られ、立ち
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