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第290話

河崎来依は私の考えに反対した。「それに、今南は離婚してるじゃない?ただ口で何とか言っただけで、彼が諦めると思う?今みたいに期限を設けた方がましだよ」

その時、私もその点を考えていた。

以前、山田時雄が20年も好きだった女の子がいることを知った時、私はその子がとても幸運だと思った。

でも、それが自分だと知った時、私はむしろ彼に対して申し訳なく思った。

申し訳ないから......

応えることが難しかった。

私が沈黙している間、河崎来依は机にうつ伏せて、指で私のイヤリングを揺らしながら言った。「南、山田時雄と試してみない?こんなに一途な男なんて今どきほとんどいないよ」

「彼がこんなにいいからこそ、私は慎重になるんだ」

でなければ、彼の感情を弄ぶことになるから。

100%の真心には、100%の真心で応じるべきだ。

もしそれができないなら、彼に早く諦めてもらって、本当に彼にふさわしい人を見つけさせるべきだ。

河崎来依は私を説得できず、諦めて話題を変えた。「そうだ、今夜はいつもの場所で食事しようよ」

彼女の言う「いつもの場所」は、以前よく行っていたプライベートクラブのことだった。

私は舌打ちをした。「あそこは高すぎるんじゃない?」

「大丈夫、私がご馳走するよ」

「お金は誰が送ってくれたの?」

「その通りだよ」

河崎来依は笑顔で立ち上がり、鮮やかな赤い唇を上げた。「伊賀丹生からもらった別れの手切れ金を断ったら、そのお金が全部私のクラブのカードにチャージした。もう返せないのよ。だからそれでみんなにご馳走するわ」

「それなら」

私は笑った。「頂くわ、河崎社長」

......

食事会があることを考えて、夕方5時に仕事を終えた。

私と河崎来依はそれぞれ車に乗り、ちょうど社員全員を運ぶことができた。

しかし、夕方のラッシュにぶつかり、クラブに着いた時には、山田時雄はすでに到着していた。

「焦らないで」

私の慌ただしい足取りを見て、山田時雄はそっと手を伸ばして支え、優しい声で注意をした。「雨が降ったばかりで地面が滑りやすいから、足を捻らないように気をつけて」

私は軽く笑った。「食事の約束をしておいて、待たせるなんて、申し訳ないわ」

彼は少し困ったように笑った。「俺に対して、まだそんなによそよそしいの?」

「そんなことないよ」

私は笑っ
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