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第296話

「お母さん......なんで......私が客なのに!」

「言うことを聞きなさい!」

藤原奥さんは怒りを抑えながら、服部鷹に携帯を返し、私を見て皮肉な笑みを浮かべた。「清水さん、このドレスのデザイナーとして、来週の婚約パーティーにはぜひ出席してくださいね。ドレスに何か問題があったら、その場で対応できるように」

「お気をつけて。お見送りはしません」

私は客を送るような手つきをして言った。「残金は前回の口座に振り込んでくださいね。よろしく」

......

一連の騒ぎが終わったころには、もう7時近くだった。

私は思い切って、彼らを火鍋に誘うことにした。

地下駐車場に着いた途端、河崎来依に飲み会の電話が入り、彼女は私を置いていくことにした。

残ったのは私と服部鷹、そして服部花だけだった。

服部鷹は私に向かってあごを上げた。「俺の車に乗れよ。明日は花と一緒に会社まで送ってやるよ」

「いいよ」

私は後部座席のドアを開けようとしたが、服部花が私を助手席に押し込んできた。「お姉さん、前に座ってよ。後ろは狭いから」

スポーツカーは見た目は良いけど、座り心地は微妙だった。

私は携帯を見て、どの店に行こうか考えていたとき、服部鷹が欠伸をしながら言った。「眠いから家で食べよう。お前、デリバリーでも頼めば」

それでも構わなかった。

私も少し疲れていたから。

家に着いた頃には、デリバリーはすでにドアにかかっていた。

服部鷹は指一本でデリバリーを引っ掛け、そのまま彼の家へと歩きながら、嫌味っぽく笑った。「俺の家に行こう。お前の家だと不倫現場を抑えられそうで怖いからな」

私は呆然とした。「不倫?」

服部鷹は怠そうに家の中へ入り、私に新品のスリッパを手渡しながら言った。「江川宏とか、山田時雄とか、あいつらには喧嘩では勝てないよ」

「......」

私は聞こえないふりをしたが、彼は続けて淡々と言った。「でも、あいつらはどっちもお前にはふさわしくないよ。江川宏もダメだし、山田時雄もそんなにいい人じゃない」

「お前はわからないでしょう?」

私は思わず反論し、彼からデリバリーの袋を受け取り、一つ一つテーブルに並べた。

「信じないなら試してみろよ」

服部鷹は鼻で笑い、目には少しばかりの高慢さが浮かんでいた。まるで私の愚かさを嘲笑っているかのようだった。

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