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第21話

友代は病室に入ると、母親がベッドに寄りかかり、眼鏡をかけて新聞を読んでいるのが見えた。

「母さん、今日は顔色が随分いいみたいね」

「つまらない連中が私を見舞いに来なければ、もっと良くなるわ」千代は新聞をパラリとめくり、淡々とした口調で言った。

「......」友代は気まずそうにベッドの端に腰掛けた。「母さん、実はあの時の『夜に脚本を読む』って話は、ただの誤解なのよ......」

当時、ユリカは役を手に入れるために、監督の思惑があることを知りながらも深夜に彼の部屋を訪れた。彼女はその結果を予想していて、一部を犠牲にしながらも、欲しいものを手に入れた。

しかし、疲れ果てて部屋を出たところで、偶然千代に遭遇してしまった。それ以来、千代はユリカに対して嫌悪感を抱いていた。

「これも誤解なのかしら?」千代は新聞を友代に投げ渡した。

そこには、メディアが賢也とユリカが夜中に診察に行ったことを報じた記事が載っていた。それに続いて、金花賞の舞台裏で賢也が写っている写真も公開されていた。さらに、二人が抱き合っている白黒のシルエットがあり、どの角度から見ても賢也とユリカだと特定され、二人の関係が進展しているという内容だった。

友代は鼻を触り、ぎこちなく笑った。「これは全部、メディアの勝手な想像よ」

「写真を誰が提供したと思ってるの?」千代は昔、九条影業の社長を務めていたが、体調を崩してからは裏方に回り、最近では経営を他人に任せていた。

賢也の結婚は非公開にされていたが、彼の許可がなければ、誰もそのことを公にすることはできなかった。

メディアが彼とユリカの写真を公表するということは、写真を提供したのは、賢也が特別に気に入っている人物であるということだろう。

彼女が先導する形で、メディアがこれほど大胆に報道しているのだ。

実際、千代はずっと息子がしおりに対して冷淡なことは分かっていた。しかし、彼女はこの嫁が好きだったので、しおりを守る決意をしていたのだ。

「九条に電話して、今後また似たようなニュースが出たら、彼を田舎に帰らせるように言いなさい」千代は眼鏡を外し、ベッドサイドのテーブルに投げ置いた。その態度は、まさに女傑だった。

友代は電話をかけ終わると、千代の手を握りながら甘えた。「母さん、ユリカのせいで怒らないでよ。私に当たらないで」

千代は彼女の手を反対
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