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第68話

由佳は仕方なく服に着替え、車に乗って貴行が教えた住所へ向かった。慣れた様子で部屋のドアを開けた。

ソファーには二人が座っていた。貴行と山口清次だった。

貴行はソファの背にもたれ、煙草に火をつけた。

山口清次はソファに座り、目を閉じて、半分のグラスを持っていた。

ドアの音に反応して彼は一瞬目を開けたが、すぐに閉じた。

床には無数の酒瓶が散らばっていた。

由佳は深く眉をひそめた。「まさか、全部彼が飲んだの?」

貴行は真剣な顔で頷いた。「そうだ」

「山口清次。」

由佳は彼の名を呼びながらソファーに近づき、彼の手からグラスを取り上げてテーブルに置いた。

山口清次は目を開け、黒い瞳で彼女をじっと見つめ、何も言わなかった。

由佳は彼と目を合わせたまま、心の中で微かな震えを感じた。彼が酔っているのかどうか、はっきりとわからなかった。

「もう遅いから、一緒に家に帰って休みましょう。」

山口清次は眉間を揉みながら立ち上がり、その瞬間体が揺れた。

由佳はすぐに彼を支えた。「歩ける?」

「歩ける。」

山口清次はかすれた声で答え、由佳の手を振り払って一人でふらつきながら歩き出した。

由佳は彼の後を追いながら貴行に言った。「ありがとう、貴行。今夜は本当に助かったわ」

由佳は山口清次の隣を歩き、彼が倒れないように気をつけた。

彼の隣を歩いていると、強い酒の匂いが漂ってきた。酒を飲みすぎたのだろう。

驚いたことに、彼は酔っていてもエレベーターの地下1階のボタンを押すことを覚えていた。

駐車場に着いた時、由佳は前を歩きながら振り返って山口清次に言った。「車はこっちよ。」

山口清次は由佳を見つめながら、彼女の後について行った。

由佳は車のドアを開け、シートベルトを締め、後部の座席の山口清次に言った。「眠いなら少し寝てて。」

「うん。」山口清次は淡々と答え、席に寄りかかり目を閉じた。

由佳は発進して、別荘に向かった。

車が停まると、由佳はバックミラーで山口清次を見たが、彼は全く反応しなかった。

車内灯をつけて後ろを向くと、山口清次は席に寄りかかり、目を閉じて眠っていた。

由佳は彼の寝顔を遠くから見つめた。顔の輪郭ははっきりとしていて、とてもハンサムだった。閉じた目は長いまつ毛を引き立て、豊かな眉骨が眼窩に美しい陰影を落としていた。

何か夢を見て
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