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第289話

「分かりました」

心理カウンセラーを見送った後、清次はその場にしばらく立ち尽くし、遠くを見つめながら深く考え込んでいた。

その時、突然携帯電話のベルが鳴った。

清次は我に返り、携帯を手に取って画面を見ると、それは林特別補佐員からの電話だった。

林特別補佐員は山口グループの社員だが、今では清次の個人秘書のような存在になっていた。

清次が山口グループを離れた後、彼もグループを辞職し、清次の他の投資や事業を手助けしていた。

「もしもし?どうした?」清次は電話を取り、少し焦ったような口調で言った。

林特別補佐員はその様子を察し、手短に話した。「清次、けんが亡くなる前に遺言を残していました。今、葬儀が終わり、弁護士が遺言を発表します。グループは株主総会を開き、会長夫人が会社に来てほしいとおっしゃっています」

会長夫人、つまりはおばあさんが清次を会社に呼ぶ目的は非常に明確だった。

けんが亡くなり、手持ちの株式を子孫に分けることになり、その中には清次も含まれているはずだった。

また、智也が持っていた株式は彼の死後、けんの指示で清次と翔に分配されることになっていた。

清次は株式を保有しているため、元々グループの株主の一人であり、株主総会に参加するのが当然の立場だった。

しかし清次は「今は時間がない、何か理由をつけて隠してくれ。まだおばあさんには自分が病院にいることを言わないでくれ」と言った。

由佳が流産したことを、清次はまだおばあさんに知らせていなかった。

彼はおばあさんが夫を失ったばかりで、そのショックを耐えられないのではないかと心配していた。

林特別補佐員はまだ何か言おうとしたが、清次が話を遮った。「頼んだことはどうなった?」

「清次、ご安心ください。金閣寺とはすでに連絡がついており、いつでも行けるようになっています」

「うん」清次は電話を切り、

彼は遠くを見つめながら静かにため息をつき、決意を固めた。

結局、決断をしなければならなかった。

清次はドアを開けて病室に入り、ベッドから1メートルのところで立ち止まった。「由佳」

由佳は相変わらず彼を見ようとしなかった。

清次も強要せず、軽くため息をついて言った。「医者が言うには、君にはうつ病の傾向があるらしい」

さっきの人は心理カウンセラーだったのか。

由佳は話をしているときに少し感じ
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