第252話

三日後、ネット上を騒然とさせるニュースが飛び込んできた。

「雲水城」のヒロインである吉岡沙織役が変更され、制作チームが新たなキャストを選び直すというのだ。

少し前のインタビュー映像を思い出しながら、ネットユーザーたちは「山口清次と加波歩美が別れたのでは？」と憶測を飛ばし始めた。

鋭いネットユーザーたちは、山口氏の公式サイトから歩美の広告が削除されていることを見つけ、「山口清次は良い夫になって家庭に戻るつもりなのでは？」という声も上がった。

このお知らせを受けた監督は驚きと喜びで複雑な気持ちだった。

全体的には、喜びの方が勝っていた。

驚いたのは、現在の撮影スケジュールでは、ヒロインが変更されると一部のシーンを再撮影する必要があり、時間や労力、そしてお金の無駄になることだ。

一方、喜ばしいのは、再撮影の費用は投資家が負担するため、そもそも歩美は投資家側が指名したキャストであり、彼には選択の余地がなかった。今では自分の希望に沿ったヒロインを選べるため、多少の時間と労力がかかっても、それは大した問題ではなかった。

スターエンターテインメントの投資担当者はこの件に関して、レストランで食事会を開き、監督と山口清次を招待した。

このレストランは、奥まった路地の一角にあり、車を路地の外に停めてから歩かなければならない場所だが、内装は素晴らしく、料理の味も抜群で、サービスも行き届いているため、立地の不便さにもかかわらず、常連客が絶えない。

清次と歩美が親密に食事をしていた前回のことを思い出しつつ、監督は、清次と由佳の関係を知った今、その時の自分の言動を少しばかり気まずく感じていた。前回、清次の前で、彼は総峰と由佳をからかっていたからだ。

しかし、山口清次は穏やかな表情で、監督に杯を差し出し、「監督にはご迷惑をおかけしました。今後は、もう制作チームのことに口を出すことはありません」と言った。

「迷惑なんてとんでもないです。山口社長とのお仕事は、とても光栄で楽しいものでした！」と、監督は急いで杯を上げ、こうを述べた。

その日は天気が悪く、食事の途中で雨が降り始めた。

食事を終えると、スターエンターテインメントの担当者と監督は先に帰路についた。

清次は洗面所から出てきて、主人と二言三言交わした後、傘を持ってレストランを後にした。

雨は激しく降り注ぎ、路