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第256話

  菜奈と林特別補佐員は、病院からさほど遠くないカフェの片隅に向かい合って座り、それぞれコーヒーを注文した。「何かお話があるんですね、どうぞおっしゃってください」 菜奈が切り出した。

林特別補佐員は微笑んで言った。「社長から さんに伝えてほしいと言われました。野心を持つことは悪くないが、それに見合う実力がなければ、無謀な行為に過ぎない、と」

 菜奈の表情が固まった。「社長がそんなことを言ったとは、どういう意味ですか?」

「社長と 総監督が劇院で写真を撮られた一件、 さんが手配したんじゃないですか?」

「否定しようとしても無駄です。こんなふうに言うからには、社長がすでにすべてを徹底的に調査したということです」

 菜奈の顔色が青ざめた。「それから、 さんは悠真と棚田に連絡しましたよね?」

 菜奈は呼吸が詰まった。「何のことだか、さっぱりわかりません!」

まさか、こんなに短い時間で 清次がすべてを調査し尽くしたとは!

林特別補佐員は自信に満ちた笑みを浮かべ、穏やかな口調で続けた。「悠真、棚田と他の4人の株主はすでに警察に逮捕されました」

 菜奈は必死に虚勢を張った。「だから何だって言うの?」

「あなたのやり方は確かに巧妙でしたが、『人に知られたくなければ,やらないでおくことだ』という言葉を忘れたんですか?社長の部下が無能だと思っているんですか?」

林特別補佐員は、社長のような立場の人間が手元に少々危険な手段を持っていることを知っていた。

社長には、過去に服役経験があり、今は社長と直接連絡を取る若者がいるという噂も耳にしていた。

 菜奈の顔は真っ青になり、椅子にぐったりと座り込んだ。「全部、加波さんが私にやらせたことです!」

自分が刑務所に入るようなことをした。その責任を歩美の代わりに負うつもりはなかったのだ。

この瞬間、彼女は初めて理解した。かつての出来事は、彼女たちが 清次を脅迫できたわけではなく、 清次が偏って愛していたからこそ成り立っていたのだ。

しかし今、 清次は加波歩美への偏愛と甘やかしを取り戻してしまったため、彼女たちには手立てがなくなってしまったのだ。

数日前、行政再審の結果が出て、元の決定が維持され、監視カメラの映像も公開された。

悠真は事態が悪化していることを察し、隼人の秘書に内々で解決しようと接触した。

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