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第258話

 「そう」圭織は適当に答えた。

 直歩の秘書は2階へ向かった。

 「何の書類なの?」圭織は尋ねた。

 どうせ直歩は会社で何の役にも立たないのに、重要な書類なんて家に届ける必要があるのか?

 秘書は一瞬止まり、書類を背中に隠しながら答えた。「大したことはありません。ただの普通の書類です」

 圭織は秘書をじっと見たが、何も言わずに手を振った。

 秘書はほっとした様子で書斎に書類を置き、加波家を後にした。

 圭織は秘書の背中を見つめながら、彼が何かを隠しているような気がしてならなかった。

 彼女はじょうろを手に取り、書斎にあるいくつかの観葉植物に水をやりながら、ついでにデスクの上に目をやったが、秘書が持っていた書類は見当たらなかった。

 そのせいで、圭織の好奇心はますます強くなった。

 彼女はじょうろを置き、デスクの上を探し始めた。

 そして、3つ目の引き出しの一番奥で、秘書が持ってきたばかりの書類袋を見つけた。

 開けると、圭織は驚き、表情が固まった。

 書類袋の中には親子鑑定書が入っていた。

 結果には、「サンプルAとサンプルBは生物学的に父娘関係である」と書かれていた。

 おそらく個人的な鑑定だったため、サンプルAとサンプルBの具体的な身元は表示されていなかった。

 しかし、この親子鑑定書が直歩のデスクにあるということは、サンプルAが直歩自身であることを意味していた!

 直歩には外に隠し子がいるのだ!

 圭織は怒りに震え、体全体が震えだした。外で浮気するだけならまだしも、子供まで作り、母娘に家産を争わせるなんて、絶対に許せない!

 彼女は絶対に直歩を問い詰めてやると決意した。

 すぐに携帯を取り出して、直歩に電話をかけようとしたが、ふと動きを止めた。

 少し考えた後、彼女は鑑定機関の名前と依頼日をメモし、書類を元の場所に戻すと、急いで病院の病室へ向かった。

 「直歩のろくでなし!自分の娘がケガをして入院しているというのに、見舞いにも来ず、外で女遊びばかりして、いつかは女のせいで死ぬわよ!」圭織は毒づきながら病室に入ってきた。

 歩美は頭を抱えた。「お母さん、また来たの?」

 「それもこれも、歩美ちゃんのためよ!今日、お父さんが外で隠し子まで作っていたって知ったの。こんなことが続けば、母娘そろって家を追い出されるわ!」圭
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