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第264話

 病院。

救急室の赤いランプが緑に変わり、医療スタッフが中から出てきた。

清次はすぐに立ち上がり、「医者、妻の状態はどうですか?」と尋ねた。

医者はマスクを外し、ため息をついて、「妊婦さんは流産の兆候がありますので、今後は絶対に安静にしておく必要があります。顔の傷は外傷で、まずは大丈夫です。治癒後に傷跡を防ぐための薬や治療を使えば、目立つ傷跡は残らないでしょう」

妊婦?

流産の兆候?

清次はその場に呆然と立ち尽くし、しばらくしてから声を低くして聞いた。「先生、妻が妊娠していると言いましたか?」

医者は清次を一瞥し、少し驚いた表情で、「どうしてそんなことも知らないんですか?奥様は妊娠4ヶ月ですよ?」

清次の表情は一瞬硬直し、信じられないという様子で、「4ヶ月?」

4ヶ月前、歩美はまだ帰国しておらず、二人の関係も安定していた。

そんなに前から?

由佳は自分が妊娠していることを知っていたのか?

あの時、彼がもし子どもができたら離婚するかどうか尋ねたとき、彼女は「子どもができても産まない」と答えた。

つまり、彼女は自分が妊娠していることを知らなかったのか?

しかし、4ヶ月も経っていて、どうして知らないのか。

ならば、彼女が子どもはいらないと強く言ったのは、彼を傷つけるための言葉だったのか。

本当は子どもを手放したくないのだ。

この子どもは、彼と由佳の、二人の子ども……

清次は周囲がふわりとぼやけ、驚きと喜びのどちらともつかない感情が心に満ちていくのを感じた。

予想外に、彼が由佳を放そうとしていた時、彼らの結婚には再び希望が見えた。

これは彼にとって最後のチャンスだ。絶対に逃してはならない!

医者は清次の顔が時折重々しく、時折喜びに満ちているのを見て、「妊婦は体質が特殊で、子宮に問題があると流産しやすいです。三ヶ月を過ぎても油断は禁物です。この胎児が流産した場合、今後の妊娠が非常に困難になることがありますので、安静にして特に注意を払ってください」

「分かりました。必ず気をつけします」清次は真剣に答えた。

今回は、彼は必ず母子を守るつもりだ。

……

由佳はまだ昏睡状態で、病室に運ばれた。

彼女の顔は赤く腫れており、頬にはガーゼが貼られていた。

清次は病床の横に座り、由佳の眠る顔をじっと見つめ、優しい眼差しを浮かべていた。

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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
赤やん……(´;ω;`)
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