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第22話

山口清次が目を上げると、ドア口に立つ由佳の姿が目に入った。

彼女は逆光に立ち、顔の表情は暗くてよく見えなかったが、彼には彼女が自分を見ているとすぐに気づいた。

「廊下でばったり鈴木さんに会ったので、皆さんに挨拶しに来ました。」由佳は微笑みながら、視線を皆に向けた。

「友達とここで食事を?」と山口清次が尋ねた。

「うん。」

大網貴行が笑いながら尋ねた。「由佳、最近何をしているの?」

「MQのブランドキャラクターです。」

大網貴行は一瞬ぽかんとしていて、爆弾を投げたことに気づいた。

しかし、他の人たちはこれが爆弾だとは知らず、加波歩美を指さして笑った。「ブランドキャラクターはここにいるんじゃない?」

由佳は笑みを浮かべ、テーブルに歩み寄り、空のグラスを手に取って自分にお茶を注いだ。「今日はたまたまお会いしたので、お酒の代わりにお茶で失礼します。お邪魔しました、また改めてご一緒できればと思います。。お兄さんも、乾杯。」

「お兄さん。」という言葉を特に強調した。

二人が結婚して以来、由佳は彼を「お兄さん」と呼ぶことはほとんどなく、親しみを込めて「清くん」と呼んでいた。

由佳はグラスのお茶を一気に飲み干した。

「どうもありがとう。」

「まだ用事があるので、失礼します。」由佳はグラスを置いた。

その時、鈴木くんが囃し立てた。「由佳ちゃん、それじゃダメだよ!兄嫁がここにいるんだから、兄嫁とも乾杯しないといけないんじゃない?」

大網貴行は鈴木くんを止めようとしようとしたが、周りの好奇心旺盛な者たちがすでに茶々を入れ始めた。「由佳、山口くんの奥さんだよ、乾杯しないの?」

「まだ一緒に仕事をしてるんだろ?一杯くらいどう?」

由佳は目を伏せ、唇を引き締めた。

どうして加波歩美に乾杯なんかできるだろうか?

「やめとこうようよ。」と大網貴行が言った。

鈴木くんは笑いながら言った。「どうして?由佳ちゃんはこの兄嫁が気に入らないの?彼女は山口くんの奥さんだよ」

その言葉には別の意味が込められていた。

山口家の養子の由佳が、未来の社長夫人に敬意を表さないなんてあり得ない。

逆に言えば、由佳が加波歩美を兄嫁として認めないなら、この山口夫人はみんなの前でどんな威厳を持てるだろうか?

山口会長は由佳を大事にしていた。もしくは由佳の態度はおじいさまの態
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