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第21話

運転手はバックミラー越しに山口清次をちらっと見て、山口清次の視線に従って外を見ると、目を見張った。

あれは奥様ではないか? 奥様のそばにいる男性は誰だ?

キャップとマスクをしてしっかり顔を隠し、撮影スタジオに現れたということは、きっと芸能人だろう。

その男性は奥様と親しい関係に見える。

運転手は小声で「山口、加波さんが出てきました」と言った。

山口清次は重くも軽くもない声で「うん。」と返事をした。

運転手は彼の意図を測り損ねた。

「車を撮影スタジオの入口に。」と山口清次が言った。

撮影スタジオの入口に車を回すと、奥様に見られてしまうのではないか?

運転手は心の中で考えたが、山口清次の指示に従い、車を撮影スタジオの入口に回した。

その間、吉村总峰が顎をしゃくり、「あれは社長じゃないの?」と言った。

由佳がその視線の先を見ると、撮影スタジオの入口にいつの間にか黒いポルシェが止まっており、そのナンバープレートは山口清次がいつも乗る車だった。

加波歩美が車の前に立っていた。

山口清次はわざわざ車から降りてきて、加波歩美に何か話しかけ、加波歩美は満面の笑みを浮かべた。

その後、山口清次は加波歩美のためにドアを開け、紳士的に手で車の屋根を押さえ、加波歩美が座った後に反対側に回り込んで後部座席に座った。

運転手が車を動かし、その場を後にした。

山口清次は加波歩美を迎えに来たのだ。

由佳の心には苦い感情が広がった。

吉村总峰は気づかずに、「僕のマネージャーが最近、新しいプロジェクトに関わってるみたいで、主役は加波歩美だそうで、山口家の子会社が投資して撮影する大作だ。専用の監督を呼んで撮るみたいだよ。由佳ちゃんの社長は、彼女に本当に大金を使っているんだね。元々MQのブランドキャラクターは池田さんだったって聞いたけど?」

由佳は無理に笑みを浮かべ、袖の中で拳を握りしめた。指が掌に食い込み、深い月の形の痕が残った。

心の中は息苦しいほどの重圧で満ちていた。山口清次は彼女の知らないところで、すでに加波歩美のためにこれほど多くのことをしていたのだ。

「由佳ちゃん、吉村くんもここにいたんだ。」

北田さんが荷物をまとめて撮影スタジオから出てくると、吉村总峰を見て驚いた。「吉村くんもここで仕事?」

「そうだよ。
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