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第192話

「大田彩夏、私のオフィスに来てください」山口清次の声は冷淡で、波風のない感じがした。

 「はい」大田彩夏は鏡で自分を確認し、耳元の髪を整え、気持ちを落ち着けた薬を盛ったことは彼が知らないかもしれない。

 彼女は立ち上がり、社長室へ向かった。

 ドアを2回ノックし、中に入って机の前に立った。「山口社長、私を呼びましたか?」

 山口清次は彼女を見上げ、手元の書類を取って中央に置いた。「これが異動命令だ。大田さんを下の支店に異動させようと思っているが、どう思う?」

 口では大田彩夏の意見を聞くようにしているが、実際には選択の余地を与えるつもりはない。

 大田彩夏は一瞬顔色を変え、信じられない様子で山口清次を見た。「山口社長、どうして突然私を異動させるのですか?」

 好意を持つことは悪くないが、周りに彼を好きな社員が残っている一方で、薬を盛った人を容認することはできなかった。

 山口清次は椅子に寄りかかり、手の指を机の上で軽く叩きながら、「言うべきことはあまりない。もし不満なら、別の部署に異動させるだけだ」と言った。

一つの人員ポジションに対して複数の人がいるため、本社のポジションは非常に競争が激しい。他の部署には空きがなく、彼が残ると降格される可能性がある。支店に異動すれば、現在の地位は保てるが、権力の中心からは遠ざかる。

彼はそれを知っている。

大田彩夏は顔色を悪くし、唇を動かして言った。「山口社長、何を言っているのかわかりません」

山口社長は彼女を見て、テーブルに置いた書類を指して言った。「来週支店に異動する。今週仕事を引き継いでください」

大田さんは分からないふりをしても意味がないことに気がついた。

「あの日は魔が差してしまいました。もう一度チャンスをください。絶対に次はありません」

「出て行け」山口清次は冷たく言った。

大田彩夏は唇を震わせながら書類を持って立ち上がり、ドアを開けて出て行った。

ドアの前で突然立ち止まり、振り返って山口清次を見つめた。「山口社長、由佳がいるのに、どうして私だけはダメなのでしょうか?彼女はここに残れるのに、なぜ私はダメなのですか?」

「説明する必要はない」山口清次は冷たく言い放った。

大田彩夏は顔色を真っ青にし、一言もなくドアを閉めて出て行った。

大田彩夏が出てくるのを見て、林特別補佐員は由佳
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