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第164話

「清次、手をそんなに強くしないで。」と歩美は言った。

山口清次は無言のまま、視線を角に向けた。

周りの人たちは二人の会話をいちゃつきとして捉えていた。

ダンス中のいちゃつきは確かに一種の楽しさがあった。

由佳は山口清次と踊った日のことを思い出した。彼の言葉で顔が真っ赤になり、一瞬で距離が縮まったように感じた。

もし歩美からの電話がなければ、その夜はとても楽しい時間を過ごしただろう。

でも残念ながら、「もし」はなかった。

歩美は二人の間に解決できない問題だった。

最初の曲が終わると、会場の客たちも次々とペアを組んで踊り始めた。

山口清次は心ここにあらずで、歩美の手を離したが、歩美は反射的に彼の手を掴んだ。

「清次、続けないの?」

山口清次は言った。「約束したことは、もう果たした。」

歩美は唇を噛んで悔しそうにしながらも、山口清次の袖を放さなかった。

山口清次は彼女の手を一瞥し、淡々と「ここは人が多いから、顔を立てているだけだ。あまり調子に乗るな。」と言った。

歩美は仕方なく、山口清次の袖を離した。

「歩美、これからは無理な要求をしないでくれ。そうしないと、私たちの関係はどんどん悪化する。自重してくれ。」

「清次、ごめんなさい。私が間違っていた。あの日、あなたが来ないかもしれないと心配して、あなたに会いたかったの。」

その日、彼は歩美のために指輪を用意していた。

大和を使わなくても、彼は必ず彼女に会いに来ただろう。

しかし、彼女は愚かな手段を使ってしまい、山口清次の反感を受けてしまった。

これらの言葉は、山口清次がすでに一度聞いたことある言葉だった。

彼は彼女の話を遮った。「もう言わなくていい。」

歩美は顔が真っ白になったが、彼は彼女を気に留めず、由佳の方向に歩き出した。

しかし、二歩進んだところで、角にいたはずの人影が消えていることに気づいた。

彼は足を止め、人ごみの中で由佳を探し始めた。

由佳の姿を捉えたとき、山口清次の目が暗くなった。

今、由佳は総峰と踊っていた。

由佳は最初、帰りたかった。もう厄介なことには関わりたくなかった。

しかし、総峰が彼女を誘った。彼の言葉に説得力があったので、断ることができなかった。

彼女は元々ダンスが得意ではなく、熱い視線が自分に注がれていることに気づいて、緊張してしまい、何度
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