共有

第147話

箱は正方形で、精巧な赤い漆と彫刻が施されていた。

 このサイズからすると、おそらくブレスレットだろう。

 「それじゃあ、開けるね」由佳は慎重に箱を開けた。

 すると、目の前には氷のように透き通り、光沢のある翡翠のブレスレットが現れた。

 由佳はその光景に呆然とした。

 他に何もない。

 これは、前回のオークションで見た「海の心」と非常に似ている。

 しかし、これは「海の心」ではないし、山口清次が加波歩美から取って再度プレゼントするわけがない。

 由佳がぼんやりしているのを見て、山口清次は説明した。「前回、海の心の素材が大きいと由佳ちゃんが言っていたから、専門の人に見張らせておいたんだ。案の定、これが二つ目だ。」

 「ありがとう」

 由佳は箱の蓋を閉じて脇に置いた。

 「試してみない?」

 「後で試すわ」由佳は言った。

 もしかしたら、このブレスレットに山口清次はかなり頭をひねらせたかもしれないが、由佳の心にはそれほど喜びがなかった。

 最初から山口清次の努力の方向性が間違っていた。

 彼女は「海の心」と同じブレスレットを望んでいなかったのだ。

 「海の心」は彼女のものではないため、もう欲しくなかった。

 もしかしたら、これが彼女の運命で、加波歩美の後に自分が手に入るのかもしれない。

 彼女は車の中の精巧なリングを思い出した。

 それが彼女へのものではなく、加波歩美への誕生日プレゼントである可能性がある。

 つまり、彼はキャンドルディナーの後に加波歩美に会う準備をしているということだ。

 本当に忙しい人だなと由佳は感じた。

 由佳は試しに言ってみた。「さっき車の中で見たリング、すごく精巧で美しかった。私にプレゼントしてくれない?」

 結婚して三年になるのに、結婚指輪はなかった。

 彼女は以前、二つのリングを買い、こっそり指に着けて会社に行ったが、彼は着けなかった。「二人が同じリングをしていると、すぐに気づかれる」と言った。

 彼女は「一人が着ければ、気づかれないわ」と言ったが、彼は結局着けなかった。

 ただ、着けたくなかっただけだ。

 後に一つのリングがなくなり、残りの一つが隅に置かれても誰も気にしなかった。

 「そのリングはカスタムメイドだ。もし気に入ったなら、デザイナーに頼んで新しく作ってもらえばいい」山口清
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status