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第152話

「わかりました」山本菜奈は、彼女が山口清次を説得できたと知った。

 山口清次は病室を出て、涼しい風を感じながら階段口に到着し、ゆっくりと息をついた。

 携帯電話を取り出し、由佳に電話をかけた。

 今夜はここに留まらなければならない。

 加波ちゃんが彼に助けを求めた電話を由佳が切ったことを、山口清次は由佳のせいにはできない。

 彼女は単に今夜加波ちゃんと一緒にいたくなかっただけだ。

 加波ちゃんが緊急事態だとは知らなかったのだ。

 彼が責められるべきだ。

 彼にはこの件に対して責任がある。

 由佳に電話をかけても応答はなく、すぐに電源が切れていた。

 山口清次は由佳が彼に対して怒っているだけだと考え、メッセージを編集して送信した。

 「加波ちゃんは大けがをした。彼女がかけてきた電話は助けを求める電話だった。どんな理由があろうとも、私には責任がある。今夜はここに留まって彼女を看護するから、他のことについては、明日帰った後に話をしよう。家で待っていて」

 メッセージを送信し、外でしばらく待った後、再び病室に戻った。

 朝になり、山口清次は携帯電話を取り出し、由佳との対話履歴を見たが、まだ返信はなかった。

 廊下に出て再び由佳に電話をかけたが、やはり電源は切れていた。

 山口清次は考えた末に、家政婦に電話をかけた。

 「もしもし」

 「おばさん、電話を由佳ちゃんに渡してください。話がしたいのです」

 「はい」

 家政婦はこの状況を考え、恐らくまた奥様を怒らせたのだろうと思いながら、奥様は電話を受けないだろうと感じた。

 約2分後、家政婦は仕方なく山口清次に言った。

 「すみません、奥様は電話を受けないと言っています」

 山口清次はしばらく黙っていたが、つぶやくように言った。「受けないなら、仕方がない」

 ……

 まもなく、加波歩美は目を覚ました。最初に目にしたのは、山口清次の顔で、彼女は喜んだ。

 彼女は山口清次に手を伸ばし、山口清次は立ち上がって彼女の手を握り返した。

 「気分はどう?」

 「とても痛い」加波歩美は弱々しく言った。

 「すぐに医者を呼んでくる」山本菜奈がすぐに言った。

 加波歩美は山口清次の手を引き寄せながら、「清くん、とても怖い。昨日どうして電話に出てくれなかったの?私を愛していないと思ってしまっ
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