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第157話

彼は夢を見ているわけではない。

 山口社長が彼に電話をかけ、宿泊しているホテルと山口総監督の部屋番号を尋ねた。

 アシスタントは、以前山口総監督に何度も電話をかけ、ようやくつながったときに山口社長が出たことを思い出した。

 そのとき、山口社長と山口総監督に何か関係があるのではないかと感じた。

 最近の会社の噂や、今日の山口社長の行動から、ますますその可能性が高くなったと感じた。

 スマホで遊んでいたアシスタントが、トイレに行こうとしたその時、再び電話が鳴った。

 画面を見ると、また山口社長からの着信だった。

 「もしもし、山口社長」

 「ホテルに着いた。出てきて」

 「え?ああ、山口社長、もう下に着いたんですね。今すぐ下に行きます……」と言いながら、アシスタントは部屋のカードキーを持って急いで出て行った。

 ところが、外に出ると、山口清次が由佳の部屋の前に立っているのが見えた。

 アシスタントは非常に戸惑った。

 山口社長はすでに到着しているのに、なぜ彼を呼び出したのだろう?

 「山口社長……」

 アシスタントが戸惑っていると、山口清次は由佳の部屋のドアを指さして言った。

 「ノックして、私のことは言わないで」

 アシスタントは分かった。

 彼はただのノック役だったのだ。

 山口社長は山口総監督にサプライズを仕掛けようとしているのかもしれない。

 彼は前に進んで由佳の部屋のドアをノックした。

 「誰?」

 ソファーでソープオペラを見ていた由佳は、ノックの音を聞いてスマホを持ちながら立ち上がり、ドアに向かって「どうしたの?」と尋ねた。

 「山口総監督、私です。ちょっとお伺いしたいことがあります」

 「少々お待ちください」由佳はソープオペラを一時停止し、ドアを開けた。

 「何か……」話の途中で、ドアの外に山口清次が立っているのを見て、由佳の顔色が急に変わり、声が止まってすぐにドアを閉めようとした。

 山口清次はタイミングを見計らってすぐに前に進んだ。靴をドアの隙間に挟み、腕を使ってドアを閉じさせないようにした。

 「由佳、ちゃんと話をしよう!」

 由佳は全力でドアを閉めようとした。「話すことはないので、出て行ってください」

 アシスタントは唖然とその様子を見ていた。

 彼が想像していたのはサプライズのシナリオだっ
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