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第156話

「国内の環境は加波ちゃんには合わないかもしれない。帰国して間もないのに何度も体調を崩しているし、もしかしたら外国の環境の方が加波ちゃんには合っているのかもしれない」

 「そんな……私が帰国したのは清くんのためなのに、どうしてそんなこと言うの?」

 「その話はさておき、加波ちゃんの怪我が大したことないなら、私はこれで帰るよ」

 加波歩美は彼を抱きしめたまま、行かせたくない様子だった。

 だが彼が目を合わせると、全身が震えて自然と手を離してしまった。

 山口清次は病室を出て、会社に向かい、そのまま由佳のオフィスに直行した。

 オフィスには誰もおらず、パソコンもオフになっていた。MQのスタッフに聞いた。

 「総監督はどこにいますか?」

 「わからないです。総監督は今日は出勤していないようで、どうやら休暇を取ったみたいです」

 「わかった」彼はすぐに車で帰宅した。

 「お帰りなさい」とおばさんが言った。

 彼は階段を上がりながら、「奥さんはどこですか?」と尋ねた。

 「奥さんは出張に行っています」

 山口清次の足が止まった。「出張?」

 「はい、出張で、アシスタントと一緒です」

 山口清次は黙り込み、ゆっくりソファーに座り、背もたれに寄りかかりながら、額を揉んだ。

 今日由佳が出張しているわけがない、きっと予定を前倒ししたのだろう。

 彼女の意図的な行動だ。

 山口清次は携帯で由佳にメッセージを送った。

 「出張中なの?いつ帰るの?」

 ただ、由佳が返信する可能性は低いと彼は思っていた。

 彼女が怒るとこうなるのだ。

 しばらくしても、やはり返信はなかった。

 山口清次は由佳に電話をかけたが、毎回拒否された。

 4回目のコールの後、電話は「おかけになった番号は通話中です。しばらくしてからおかけ直しください」となり、ブラックリストに入れられてしまった。

 山口清次は仕方なく、林特別補佐員に電話して由佳の行程を確認し、自分の航空券とホテルを手配するように頼んだ。

 この問題を先延ばしにするわけにはいかず、彼はできるだけ早く由佳に説明しなければならない。遅れると、由佳との関係が本当に終わってしまうかもしれない。

 林特別補佐員が電話をかけ直し、「社長、総監督はB市に出張しています。そこに行くつもりですか?」

 「はい、最も早
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