第129話

歩美のステージでの発言から察するに、由佳とは長い付き合いで、まるで妹のように思っているようだった。

普通の人が浮気相手（愛人）に対してそんな口調を使うだろうか？

とはいえ、歩美のファンは由佳に対して依然と厳しい態度をとっていた。

記念写真を撮る際、歩美がスカートを踏まれそうになり、転びそうになった場面があった。

その時のディレクターのカメラが捕らえたのは、山口清次が歩美を支え、彼女が由佳を一瞥する様子だった。

ネットユーザーたちは誰がスカートを踏んだのかはっきり見えなかったが、歩美は見えていたはずだ。

この一瞥のため、ファンたちはスカートを踏んだ人が由佳だと断定した。

由佳のTwitterには今日新たに多数のコメントが寄せられていた。幸いにも、彼女はプライベートメッセージをオフにしていたため、今日はそれで助かった。

しかし、これらのコメントは由佳に影響を与えることはなく、彼女は軽く目を通してからTwitterを閉じ、携帯を置いた。

褒め言葉でも非難でも、すべてが流量（アクセス）を生むものだ。

部屋の外からノックの音が聞こえ、「奥様、夕食ができました。」

「わかりました。」由佳は応答し、バスタブから出て簡単な部屋着に着替えて階下へ向かった。

「奥様、今夜は旦那様も戻ってこられますか？夕食を取っておいた方が良いでしょうか？」

「たぶん戻ってこないと思うので、取っておかなくて大丈夫です。」由佳は答えた。

「わかりました。」

由佳は夕食を終えると、再び階上へ戻った。家政婦は食器を洗い、キッチンを片付けた。

家政婦がキッチンから出てきた時、山口清次が帰宅した。

彼はネクタイを緩めながら家政婦に尋ねた。「まだ夕食の時間か？」

家政婦は止まった。「旦那様、お帰りなさいませ。奥様が今夜は旦那様が戻られないと仰っていたので、夕食を取っておりません。鍋はもう洗ってしまいましたが、すぐに何かお作りします。」

山口清次は少し呆れたような表情を見せた。「わかった。」と呟き、直接階上の主寝室へ向かった。

由佳は今日残業もなく、早めにベッドに入って携帯を弄っていた。

突然、部屋のドアが開き、山口清次が勢いよく入ってきた。

由佳は彼の姿を見て驚いた。「こんな時間にどうして帰ってきたの？」

山口清次はベッドの脇に立ち、彼女の呆然とした表情を見て少し笑った