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第71話

磨りガラス越しに、京都の人々がこの壮大な結婚式を目にしていた。

羨望の眼差しを向ける中、この空中庭園で結婚式を挙げている二人が一体何者なのかを考えていた。

この二人があまりにも神秘的に見えた。結婚式に参加しているのは彼ら二人だけで、親戚や友人は一人もいない。証人すらもいない。

舞台の上で、田中健太は佐藤まゆみの手を取り、予め用意していたヒスイのネックレスを取り出した。

「これは君への結婚記念日のプレゼントだ。気に入ってくれるといいな。」

佐藤まゆみはその透明感溢れたヒスイのネックレスを見て驚きの声を上げた。「これ……これは玉華堂の石じゃない?どうやって手に入れたの?」

佐藤まゆみの心中には大きな驚きが広がっていた。

まさか、田中健太がSNSで話題の謎のお金持ちなのか?

そうでなければ、このヒスイのネックレスがどうして彼の手元にあるのか?

しかし……

それでも説明がつかない!

田中健太がどんな人かは自分が一番よく知っている。彼がお金持ちであるはずがない。その身分とはまったく結びつかないのだ。

田中健太はこの時、佐藤まゆみの驚きを察し、心の中で葛藤していた。自分の本当の身分を明かし、彼女に自分が東京の田中家の人間であり、数千億円の資産の継承者であることを伝えたいと思った。

しかし、次の瞬間、彼は非常に大事なことに気付いた。

田中家が今どのような状況にあるのか、自分にはわからない!

自分が幼い頃、叔父たちと会った記憶がある。つまり、田中家の前の世代には父親一人ではなく、他にも叔父や伯父がいるということだ。

もし彼らがいるならば、その子孫もいるはずでり、彼らは必ず自分を敵にするだろう。

自分はまだ全てを把握していない。十分な権力を持っておらず、自分と佐藤まゆみを守ることができない時に軽々しく身分を明かしてしまうと、佐藤まゆみに命の危険をもたらすかもしれない。

財産争いの手段は非常に残酷で、愛する妻が自分のために危険を冒すことを望んではいなかった。

そう思った彼は、わざと嘘をついた。「このネックレスは、玉華堂の店の宝石と見た目はそっくりだけど、実は僕が頼んで作ってもらったコピーだ。良質なヒスイを使っているけど、本物とは比べものにならない。数百万円程度で買ったんだ。」

そう言いながら、田中健太は緊張して佐藤まゆみに聞いた。「嫌じゃないか?
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