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第77話

「社長、そろそろ行きましょう」

望月景真は和泉夕子に見惚れていたが、望月哲也が横で咳払いをしたことで、ようやく我に返った。

彼は軽くうなずき、和泉夕子を連れて店を出た。

ちょうどその時、姉妹と一緒にショッピングをしていた安藤美弥が二人の姿を目撃した。

彼女は驚愕し、メイクアップを施した和泉夕子の姿をじっと見つめた。

初めて和泉夕子に会ったとき、彼女はただ少し気品があって、綺麗な女性だという印象だった。

だが、今回は違った。彼女は名門の令嬢以上に高貴な雰囲気を纏っていたのだ。

安藤美弥は振り返り、その店はVIPカードがないと入れない高級ブランドショップだということに気づいた。

これでようやく理解した。和泉夕子が今付き合っている男は、林原辰也よりもはるかに金持ちだと。

この一式の衣装だけで、数千万はかかるだろう。霜村涼平でさえ、彼女にこれほどの金を使ったことはなかった。

そう思うと、安藤美弥の心は悔しさでいっぱいになった。同じ「売る」立場でありながら、どうして和泉夕子だけが自分より良いものを手に入れるのだろう?

彼女は怒りを抑えきれず、携帯を取り出して動画を撮り、霜村涼平に送った。

「涼平、見てよ。和泉さん、また新しい金持ちを見つけたみたい。今度はもっとお金持ちだわ。何千万円もかけて新しい姿に変身してるわよ」

彼女はA市の金持ちをほぼすべて調べ尽くしていたが、帝都の望月景真については知らなかった。そのため、彼をただの新興成金だと思い込んでいた。あまりにも若く見えたからだ。

その頃、霜村涼平はゴルフをしていた。ゲームが終わり、携帯を見たときにはすでに1時間が経っていた。

彼がその動画を見ると、激しい怒りが込み上げてきた。

あの和泉夕子が、望月景真に高級なドレスを買ってもらっている?!

彼はゴルフクラブを叩きつけ、すぐにその動画を霜村冷司に転送した。

「兄さん、見てよ。この和泉さん、完全に怖いものなしだよ」

霜村冷司は会議中だったが、携帯のバイブレーションで気が散ってしまった。

通常なら、会議中に携帯を見ることなど決してない彼だったが、今回はなぜか手に取って画面を見てしまった。

動画を見た瞬間、彼の冷淡な表情が徐々に凍りつき、恐ろしいほど冷たいオーラが漂い始めた。

彼の警告を無視し、なおも望月景真と関係を持っているとは、一体どうい
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