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第76話

望月景真は皆の表情を無視して、PPTを説明している幹部に顎をしゃくり、「続けて」と指示を出した。

幹部は仕方なく報告を再開したが、収益に関しては、和泉夕子が情報を盗み出すのではないかと恐れ、一部を伏せたまま説明を進めた。

和泉夕子はその様子を見て、口を挟むこともできず、黙って望月景真の隣に座り続けるしかなかった。

会議が終わると、和泉夕子はすぐに望月景真を追いかけて尋ねた。

「どうして私に会議を傍聴させたんですか?」

望月景真は自分より一回り小さな和泉夕子を見下ろし、優しい声で答えた。

「君が何となく憧れているように見えたから、傍聴させただけさ」

和泉夕子は一瞬驚いた。そんな理由だったとは思ってもいなかった。

「あなた……私がこの情報を藤原家に報告するのを恐れないのですか?」

「どうでもいい数字ばかりだし、それに……」

望月景真は言葉を少し止めてから、ふっと微笑みを浮かべた。

「君の人柄を信じているからね」

その笑顔は、昔の桐生志越と何も変わらなかった。清々しく、陽光のように輝いていた。

まるで彼が、彼女の心臓を踏みつぶした望月景真ではなく、かつての桐生志越そのものであるかのように見えた。

「和泉さん、準備をしてくれ。今晩、一緒にある宴会に出席してもらう」

和泉夕子は呆然としていたが、すぐに我に返った。

「宴会ですか?」

望月景真はうなずき、「藤堂家が開くパーティーだ。僕は付き添いが必要なんだ。悪いけど、君にその役をお願いしたい」と言った。

個人秘書に女伴の代役まで含まれているのか?

藤堂家は特に名門というわけではないが、いわゆる豪門に分類される家柄だ。

霜村冷司のような地位のある継承者が出席することはないだろう。

和泉夕子は少し考えて、それに応じた。どうせ入札会が終われば望月景真は帝都に戻るのだ。

あと数日だけのことだから、我慢すれば済むことだ。

望月家の社長の付き添いとして宴会に出るなら、それなりの装いが必要だった。

望月景真は彼女の反論を許さず、A市のブルーバイモールに彼女を連れて行った。

このモールは、以前、白石沙耶香と一緒に行ったことがあるが、その時は彼女たちの服装を見て、入り口で追い返された場所だった。

ここに出入りする人々は、いわゆる上流階級の者たちで、売られている商品も全て高級なフランスの有名デザイ
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