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第162話

沙耶香のこの言葉を聞いた途端、陰口を叩こうとしていた江口香織は、すぐに黙り込んだ。

沙耶香は冷たい視線をしまい、江口颯太に向かって言った。

「私は夜勤があるから、妹さんのことはあなたに任せる」

江口颯太は頷き、車の鍵を手に取って言った。

「送っていくよ」

「いいえ、車で来たから」

沙耶香はそう言って彼の提案を断り、和泉夕子の腕を挽いて病室を出た。

二人が部屋を出ると、江口香織はすぐに身を乗り出して江口颯太に言った。

「ちゃんと説明すればいいじゃない、なんでその400万円を返さなきゃならないのよ?」

江口颯太は外を確認し、二人が遠くに行ったことを確かめてから答えた。

「金を返さなければ、彼女は信じないだろう」

江口香織は冷たく鼻を鳴らし、可愛らしい顔に怒りが浮かんでいた。

「一体いつまで待たせるつもり?」

江口颯太は江口香織のお腹を優しく撫でながら、彼女を宥めた。

「香織、もう少しだよ。彼女がローンを全部返し終えたら、市内に君を迎えに行くから」

彼が市内に迎えに来るという言葉を聞くと、江口香織の怒りは徐々に収まり、目には決意の色が浮かんだ。

沙耶香と和泉夕子が病室を出た後、和泉夕子は先ほど録画した映像を沙耶香に送り、その後こう注意を促した。

「江口颯太は、妹が妊娠していて、結婚式に出席できなかったと言っていたけど、さっき君に説明したときは、今日初めて妹が妊娠していることを知ったって言ってたのよ。彼の話は一見すると筋が通っているけど、前後が矛盾している。彼とその妹は、何か変な関係があるかも……」

沙耶香は映像の中で、江口颯太が江口香織の鼻を指でこする同じ動作を見て、表情が暗くなった。

「変な関係どころじゃない、あれはまるで不倫じゃない!」

「でも、彼らは兄妹なんだよ、不倫はちょっと……」

「誰が本当の兄妹だって言ったの?!」

沙耶香は苛立ちを隠せず、携帯電話をしまいながら言った。

「私は彼の家族について何も知らないのよ。彼が私を騙しているかもしれない!」

和泉夕子も彼女の言葉に同意し、頷いた。

「問題は彼の家族にある。新しい嫁を実家に入れないなんて、おかしいでしょ」

沙耶香はその一言でハッとし、すぐに言った。

「彼の実家に行って、近所の人に聞いてみればすぐ分かるはずよ」

和泉夕子はすぐに彼女の手を取り、冷静になるよ
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