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第198話

松本若子はまだ少し頭がぼんやりしており、強い眠気が彼女の目に宿っていた。話す声もかすれており、喉が少し乾いていた。

遠藤西也は特に気を使い、ポットから彼女のために熱いお湯を注いだ。

松本若子はその水を受け取り、一気に飲み干すと、少し楽になり、頭もはっきりしてきた。彼女は昨夜のことを少しずつ思い出していた。

細かいことは覚えていないが、何が起きたのかは大体わかっていた。

「あなた、嘘つきね」松本若子は突然、冷たい表情で彼をじっと見つめ、厳しい顔をした。

遠藤西也は心臓がドキリとし、彼女の視線に彼女が昨夜のことを思い出し、彼が何かをしたのではないかと疑っているのではないかと慌て始めた。

彼は少し焦りながら、「若子、俺は......」と弁解しようとしたが、松本若子は彼の言葉を遮って、

「あなた、昨夜は一晩中私の看病をしてくれたのに、今になって嘘をつくなんて」と言い、続けた。「あなたが嘘をつけばつくほど、私は罪悪感を感じるのよ。正直に言ってくれた方が気が楽になるのに」

彼女の目を見て、彼が誤解されていないことを察した遠藤西也は、ほっと息をつき、優しい笑みを浮かべて謝意を込めた表情で言った。「昨夜、君は熱を出していて、薬も飲めないから、心配で一緒にいて看病してたんだ」

今振り返っても、彼は昨夜、ホテルに彼女を残さなくてよかったと思った。もし彼女が一人でホテルで発熱していたら、どうなっていたことか。

松本若子は呆然と遠藤西也を見つめ、頭の中にいくつかのぼんやりとした映像が浮かんだ。彼女は誰かに抱きしめられて泣いている、その誰かが彼女を慰めていた。

その瞬間、彼女はその相手が藤沢修だと思っていたような気がした。彼女はもしかしたら、熱のせいで意識がもうろうとして、遠藤西也を藤沢修だと勘違いしていたのではないかという不安に駆られた。

不安を感じた彼女は、「昨夜、私何か変なこと言ってなかった?」と恐る恐る尋ねた。

「いや、何も言ってなかったよ。君は熱で朦朧としていて、ずっと眠っていただけだよ」

もし彼女が昨夜のことを知っていたら、確実に気まずくなっていただろう。

松本若子は安堵の息をつき、昨夜の発熱が原因で見た夢だと思った。だから、あの映像は夢の中の出来事だろうと考えた。

「ありがとう、本当にどう感謝していいかわからないわ」

彼女は感謝の言葉しか思いつ
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