共有

第067話

「光莉、この件については母さんに言わないでくれないか?あの人の体はもうあまり丈夫じゃないから、この話を聞いたら耐えられないだろう」

「つまり、藤沢家の誰もが知っていて、おばあさんだけ知らないってこと?」

藤沢曜はうなずいた。「ああ、今はまだ彼女に言わないでくれ。俺がこの問題を早急に解決する」

「あなたが解決するですって?」伊藤光莉はまた笑いながら、「自分の問題すらうまく処理できていないのに、息子と嫁と愛人の問題まで手を出すつもり?」

彼女の言葉にこもる冷ややかな嘲笑に、藤沢曜の心が痛んだが、彼の目には決意が浮かんでいた。「だからこそ、俺が同じ過ちを犯させたくないんだ。俺は変わったんだよ、光莉」

「殺人犯が法官に言ってるみたいね。『俺はもう以前と違う。もう誰も殺さないから死刑にはしないでくれ』って、通ると思う?」伊藤光莉は冷たく反問した。

「俺が殺人犯か?」藤沢曜は声を荒らげ、「たとえ罪を犯しても、軽重はあるだろう?刑期を終えて社会に復帰する人もたくさんいる。すべての罪が死刑になるわけじゃないし、すべての間違いが許されないわけじゃない!」

伊藤光莉は冷淡に彼を見つめ、何の感情も見せなかった。「確かに、その通りよ。でも、すべての過ちが許されるわけでもないってことも忘れないで。許すかどうかは相手次第よ。私は法官じゃないから、公平にする必要もない。偏見を持っていてもいいし、自分の考えに従って行動する自由もある。あなたが『不当だ』と感じたとしても、我慢するしかないのよ。そうじゃないなら、私たちも離婚しましょうか」

「離婚」という言葉が出た瞬間、藤沢曜の心はまるで強打されたかのように激しく痛んだ。

「どう、離婚したくない?」伊藤光莉は彼に近づき、彼のネクタイを直すふりをして親しげな態度を見せたが、その声には冷笑が満ちていた。「じゃあ、我慢して耐え続けなさい。どちらが先に限界に達するか見ものよ」

藤沢曜は押し黙った。

このままでは、本当に取り返しのつかないことになるのだろうか。

「修はどこの病室?」伊藤光莉は尋ねた。「教えてくれないなら、看護師に聞くわ」

藤沢曜は拳を握りしめ、頭が重くなるような感覚に襲われながら、沈んだ声で答えた。「ついて来てくれ」

二人が病室に入ると、修はベッドにいなかった。

「彼はどこ?」伊藤光莉は藤沢曜に疑わしげな目を向けた。
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status