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第075話

松本若子がレストランに到着すると、伊藤光莉はまだ来ていなかった。

彼女は少し前にメッセージを受け取っており、少し遅れるから先に座って待っていてほしいとのことだった。

松本若子は店員に案内され、伊藤光莉が予約した席に向かった。

しかし、座席には思いもよらない人物が座っていた。その人物を見た瞬間、松本若子の表情は一気に冷たくなった。

「桜井雅子、どうしてここにいるの?」彼女は険しい声で問いかけた。

桜井雅子も松本若子を見て一瞬驚いたが、すぐに顔を上げ、誇らしげに答えた。「未来の姑が私を食事に誘ったのよ、ダメかしら?」

「未来の姑?あなたが言っているのは、修の母親のこと?」

「そうよ、他に誰がいるって言うの?」桜井雅子は得意げに答えた。「昨夜、姑から電話があって、今日一緒に食事をしましょうって。とても親切だったわ。彼女は息子のことを本当に大切にしているのね。さすが、自分で十月十日をかけて産んだだけのことはあるわ」

松本若子は冷笑し、「それじゃあ、おばあちゃんや父親は彼を大切にしていないと言いたいの?」と皮肉を込めて返した。

「私はそんなこと言ってないわ。誤解しないでちょうだい」桜井雅子は無邪気な顔でそう言い返したが、言葉の端々に含みが感じられた。

松本若子はその場で携帯を取り出し、伊藤光莉に電話をかけた。しかし、何度かコールするも応答はなかったため、彼女はメッセージで尋ねることにした。

「お義母さん、どうして桜井雅子も誘ったんですか?もし二人で食事するつもりなら、私は先に帰ります」

するとすぐに返信があった。「帰らないで。あなたたち二人を一緒に招待したのよ。座って待ってて、すぐに行くから」

「お義母さん、どうしてこんなことを?」

「来てから話すから。待ってて、帰らないで」

伊藤光莉には何か意図があるのだろう。彼女がこうしたからには、きっと理由があるに違いない。松本若子は一旦その場に留まることにした。

彼女は携帯をバッグにしまい、席に座った。

向かいには桜井雅子が微笑みながら果汁を飲んでいた。「修が事故に遭ったって、まだ知らないんじゃない?」

松本若子は驚いたふりをしながら、「そうなの?いつのこと?」と尋ねた。

「数日前よ。ずっと彼のそばにいたわ」

松本若子は膝の上に置いた手をぎゅっと握りしめたが、顔には微笑を浮かべ続けた。「そう、大
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