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第079話

「そうなの?」松本若子は何事もないように答えた。実際、彼女は藤沢修がどれだけの財産を自分に分け与えたのかを気にしていなかった。

最初に離婚協議書にサインしようとしたとき、誤字があったと言われ、書類が修正された。しかし、他の内容がどう変わったかは彼女にはわからない。

そして二度目のサインの際、彼女は内容を確認せずにそのまま署名した。

つまり、彼女にとっては金額などどうでもよかったのだ。

松本若子がそんな冷静な様子を見せることで、桜井雅子はさらに怒りを募らせた。彼女には、松本若子が勝ち誇っているようにしか見えなかった。

桜井雅子は離婚協議書を文書袋に戻し、冷たく言い放った。「松本若子、あなたに修から何億もの慰謝料を要求する資格なんてあるの?どうしてそんなに多くの財産を持って行けるのよ?」

藤沢家にとっては微々たる金額かもしれないが、桜井雅子からすれば、修は過剰に大盤振る舞いしているようにしか見えなかった。

もしこのお金が松本若子に渡れば、彼女は一夜にして億万長者となり、悠々自適な生活を送ることができる。

桜井雅子はどうしても納得がいかなかった。なぜ松本若子がこんなに悠々自適な生活を送れるのか?

松本若子は離婚協議書を一通り読み終えた。

藤沢修は本当に大盤振る舞いしていた。離婚協議書の内容を改めて確認した松本若子は、以前よりもさらに多くの財産が自分に割り当てられていることに気づいた。

松本若子は離婚協議書をテーブルに置き、冷静に言った。「桜井さん、あなたは勘違いしてるわ。私は修にお金を要求したことはない。彼が自分で決めて私に渡したの。不満なら彼に聞けばいいじゃない?」

その一言で、桜井雅子はますます怒りを覚えた。修が自ら大金を渡しただなんて、まるで狂っている。どうして愛していない相手に、こんな大金を与える必要があるのか。

「彼が渡すと言ったからって、何も考えずに受け取るなんて、本当に恥知らずだわ。あなたがそんな大金を手にする資格なんて、どこにあるの?」桜井雅子は吐き捨てるように言った。「この一年、藤沢家のために何をした?彼らに養ってもらい、学費まで出してもらって、借りがあるのに、さらにお金を要求するなんて。あなたはただ一年間結婚していただけ、しかも彼はあなたを愛していない。それなのに、財産を要求するなんて、恥知らずにも程がある!」

もともと松本
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