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第7話

Author: しょあん
last update Last Updated: 2024-10-29 19:42:56
私は景山の寝殿内で軟禁され、外へ一歩踏み出すことも許されなかった。

綾夏は自由に動けるが、景河が彼女の周りに見張り役をつけておいた。

景河のそばにいる綾夏は昔のように笑顔を見せることがなく、引き換えに、日々愁容でいた。

景河はもはやこの世に全ての最上級のものを綾夏に捧げる勢いで、彼女の愛情を蘇ろうとしたが、何の響きもなかった。

一方で、景山はまでる新婚した頃のように、毎日私のそばにいてくれた。

外出禁止の暮らしは天君の誕生会の暇で続いて、景山はその日で、稀なことに、我を連れて出かけた。

烏森は痩せてしまって、彼女の顔色はさらに悪くなった。

明らかなことに、彼女も自分はもう景山や景河がいつもそばで、守ってくれる存在ではなくなったことに気付いたのだ。

そんなことに気付いた烏森の危機感がとびきり高まった。

緊張感につられて、人は正気でないことをしでかす。

たとえ神々であっても、例外はないのだ。

烏森が再び私と綾夏の目の前で、水に飛び込んで私たちに濡れ衣を着せようとした時、私たちはただ冷静に彼女を眺めていた。

烏森が水の中でもがいていたのを見て、綾夏はつい笑い出してしまった。

「烏森藍璃殿、同じ手口はなんかも繰り返されて、観客はやがて飽きてしまうのじゃ」

私は何も言わずに、何の迷いもせずに、蓮華の池に飛び込んだ。

次の瞬間に、誰かが私の体を引き上げたのを感じた。

私を岸辺に運んだのは景山だった。彼は緊張そうに、私を心配しているような口調で聞いてくれた。

「大事ない、和葉?」

私は頭を振って、沈黙を選んだ。

池に沈んでいた烏森がやっと、侍女や衛兵たちに引き上げて、救われたのは溺水で死にかけていたところだった。

彼女は猛烈に咳をして、水を吐き出した後、震えたいた指で私と綾夏を指した。

彼女が何を言い出すのを待たずに、景山の顔色がすっかり曇った。

「烏森殿、そなたが自省して収斂するのを余は期待しておった」

「和葉は余の妻じゃ。変なちょっかいを出されて、濡れ衣を着せられては困る」

「余は烏森殿の思っておるほど、愚かではあるまい。そなたの手の内をよく知っておる」

そう言いながら、彼はついでに側近に命令を下した。

「烏森藍璃は王妃を陥れ、池におちらせた。そのものを捉えて、寝殿に閉じ込め!一歩でも外に出ることは許さん!」

景河が駆け
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    私は呆れて笑い出しってしまった。一方で、景山はなんとなく態度を柔らかくしてくれた。「ほら、和葉が心配しておるのは分かっておる。なれど、無関係で無辜の人に当たるのは筋ではあるまい」「そなたは、烏森藍璃は白じゃと思っておるか」私は真っ直ぐに景山の目を見つめたが、彼はそわそわしながら、目をそらして、二度と口を効かなかった。烏森は得意げにドヤ顔で私を見ながら笑った。そして、彼女は衰弱したか弱さに戻り、景山のふとことに寄りかかった。私は頷きながらが、そう告げた。「よかろう」「景山殿、今後後悔しなといいが」私が偏殿に入った時、景河は綾夏の亡骸を抱き締めながら、ぼんやろとしていた。私が来たのを見て、彼は何かを言い始めた。彼の声は震えていた。「ありえない。綾夏が’死するなんてありえない」「そんなはずじゃなかった。余は......余は綾夏がずっと前から魔族と内通していたのを判明したはずじゃ」「魔族の連中は、綾夏に害をなすはずじゃが......」私は何の表情もせずに、彼を押し退けて、代わりに綾夏を抱き締めた。「そなたは長年側にいてくれた妻よりも、他人を信ずることにした」「五十嵐景河殿、今更悔やんでも、もう間に合うまい」景河は沈滞した顔で綾夏の亡骸を見つめた。「間に合う。間に合うのじゃ、余が侍医を呼んで、治療すればきっと治るはずじゃ!」「余は真相を明らかにして、綾夏の名誉を挽回するのじゃ!」私は景河のことを皮肉った。「去ね!今の綾夏はそなたの顔など、見たくもないのじゃ」......「誰も入ってななりません」と命令した私は一晩中、綾夏の側で座っていた。景河は土下座をしたまま、一晩中偏殿の外にいた。私はその後、彼が当日側近でついていた衛兵の全員を牢屋に打ち込め、拷問したうえ、侍医の全員を偏殿まで連れ込んだという噂を耳にした。しかし、彼も私も、もう手遅れだと言うことを誰よりも、はっきりと分かっていた。私は綾夏の亡骸を抱えて、偏殿の隠し通路でこっそりと逃げ出してすぐ、輪廻の井戸までついた。背後から喧騒と叫びがしてきた。明らかに、私が綾夏を連れてここにきたことがばれたのだ。綾夏をきちっりと抱き締めて、底の見えない井戸を見ながら、私は自分だけが聞こえる声で自分を励んだ。「綾夏、もし

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    話を言い終えると、綾夏は急に血を吐き出して、気を失った。私は一瞬驚きで固まって、この薬の薬効の効き目で感心していたが、表ではその場面に相応しい悲痛な表情を被っていた。「綾夏!綾夏!」衛兵は慌てて綾夏を部屋に寝かせたあと、急いで侍医探しに出ていった。もう気が遠くなるような時間が経過したあと、衛兵はやっと帰ってきたが、彼の後ろについてきてれる人が誰一人もいなかった。私は皺を眉間によせた。「侍医はどこじゃ?」少し沈黙を保った衛兵は最後にこう言った。「全員藍璃天女のところに......」「藍璃天女の侍女の方々が星雲殿の門のところで道を塞いで、それがしを通さなくて、景河殿も景山殿も藍璃天女のお側に......」私は歯を食いしばって、飛び出していった。何しろ、芝居だとはいえ、真実感を与えてやらないと困るのはこちだ。......星雲殿ないでは、烏森はいかにも衰弱しているかのように、景河の懐に寄りかかっていた。一方で、景山は自身の法力を消費して彼女の傷を癒してあげていた。烏森の侍女はなんの迷いもなく、私を止めた。そして、軽蔑に満ちた目つきで私を見た。「待ちなさい!藍璃様が今中で傷の手当てをしておられる!誰であろうと通せませんぬ!」私は冷たい目つきでその侍女を睨みながら、彼女の頬を引っ叩いた。「我は王妃じゃ!我を通さないとは肝の座っておること!」門のところでの騒ぎは明らかに中にいた彼らにも聞こえていた。私は、景山が「彼女を通しなさい」と言ったのを聞いた。その侍女は悔しそうな表情で私を見たが、大人しく道を開けた。私は早足で中へ入って、侍医の一人を引っ張って出ようとした。「待ちなさい!」私は少々躊躇ったが、やはり星雲殿を出ることにした。景山の口振りは、微かに怒り気味だった。「月島和葉!そなたは何をなさっておる?!」その場に足を止めた私の両目は、私が振り向いた瞬間に真っ赤になった。「それを我に聞くものか。むしろ殿のお二方は、ご自分のなさっておることは果たして何なのかを自分に問いかけたほうがよろしいのでは?!」私は人差し指で、烏森を自分の懐に寄りかからせた景河を指した。「景河殿!お言葉ですが、あのまま放置されておられたら、綾夏殿は命を落とすのやめしれぬ。そなたは、それを分かって

  • 天界皇子の妃になった私たち   第2話

    その夜、景山はいつまで経っても帰ってこなかった。考えなくても、彼は今頃、池に落ちて冷えてしまった烏森のそばについてあげているのだ。綾夏は密かに壁を乗り越えて、私の部屋に来てくれた。私のそばに座った彼女は、小さな箱を差し出した。「我はもう薬を飲んだのじゃ。この数日内で発作を起こしましょう」「我が仮死状態になったら、和葉は隙を見て我の遺体を抱えて、輪廻の井戸に飛び込めば、我らは帰れるのじゃ」「輪廻の井戸の中での魔気のことは怖がらなくても大事ない。これは我が白雲の丹師から貰うた秘薬じゃ。これを飲めば、魔気の侵入を一時阻止できる」勝手に話を進んでいる中、彼女は急に笑い出した。「のう、和葉、我らはこれで心中ってことになるじゃろう?」私は彼女を白い目で見て、何も言わなかった。扉の外で足音がしたので、綾夏は私を見てぺろりとしたの共に、再び壁を乗り越えて自分の宮殿へと戻った。次の瞬間に、景山は扉を押し開けて、入ってきた。寝床に座っていた私を見て、彼は皺を寄せながら言った。「そなたは誰と話をしておった?」私は頭を振って、彼の前では依然として服従の振りをした。「いいえ、我の独り言だけじゃ......」景山もそれ以上何も聞かずに、ただ淡々と私に一瞥した。「寝ましょう」と彼は言った。私は彼のその態度で少々戸惑い、彼はいつものように、「なぜ藍璃に害をなしたか」と私を問い詰めなかったことで驚いた。けれど私はすぐ彼の言葉に従い、寝床の一番奥に横になった。服の布が微かに摩擦した音がしたあと、景山も私のそばに横になっていた。背中を見せた彼の声には、なんの感情も聞き取れなかった。「藍璃も帰ってきたばかりじゃのう。あれは安堵感がなさすぎのだけじゃ。余もこれまでのお情けを念じないと」側に寝ているから伝わってきた体温の暖かさを感じながら、私の心頭は冷めていく一方だった。景山は昔から頭が冴えていて、ずっとことの本質を理解していたのだ。彼は、今日烏森が池に落ちたのも、これまでの数々も私と綾夏を陥れるための、烏森自身の自作自演だということを理解していたのだ。それでも、彼は烏森を庇うことにしたのだ。他に理由はなく、「安堵感がなさすぎのだけじゃ」という一言のためだった。私も寝返って、「うん」と小声で返事した。

  • 天界皇子の妃になった私たち   第1話

    私と月島綾夏が烏森藍璃に落とし入られたのは、今月の三度目だった。私は綾夏と天界の霊池の前に立っていて、烏森藍璃がだんだん沈んでいくのを見ていた。池の水面に残ったのが泡の一抹だけになったまで、私たちはただそこで見ていた。綾夏は眉間に八の字を寄せながら、鼻で笑った。「烏森藍璃、もうその三文芝居をやめなさい」彼女が言い終えたそば、私たちの後ろから何かに急かされたかのような足音が聞こえてきた。私は綾夏の袖を軽く引っ張り、口を開くのに間に合う前に、誰かに池にほうへ押し付けられた。そして、自分を押したその力につられて、私は池に落ちた。耳元に響いていたのが、「和葉!」という綾夏のどぎまぎした叫び声だった。私はなんとかして手足を動かして、水面に浮き出すことに成功したが、私の目に映っていたのは、自分の主人であるはずの人、天界の景山皇子が、思わず池に飛び込んだ光景だった。それなのに、彼は私のいる方向とは真逆のほうへ泳いていった。勝手に池の底に沈み、気を失った烏森藍璃をお姫抱っこで、岸辺に運んで応急手当をし始めるまで、彼はずっと私に目もくれずにいた。鼻に水が濯ぎ込み、気を失いかけていたその突端に、私は誰かが私の体を自ら引っ張り出しながら、岸辺をよっていくのを感じた。私の耳元は綾夏の焦りに満ちた声に囲まれた。「月島和葉!ここで死するな!和葉を無くして我はどうしましょう!」綾夏は往復に私の胸を圧迫し続けた。胸の中まで入り込んだ水を全部吐き出した後、私はようやく意識を取り戻せた。私は微かに微笑んで、衰弱していた体を彼女の懐によりかけてから言った。「死なないから大事ない」私は振り向いて、術で気を失った振りをしていた烏森藍璃を呼び覚まそうとしていた五十嵐景山を眺めた。術を施していた景山の手は微かに震えていた。「藍璃、起きよう......天界はもうそなたを失うわけには......」綾夏は私が緩やかに立ち上がるのを支えてくれた。そして、そんな彼女の口から、景山への咎め文句が出てきた。「五十嵐景山、そなたのその瞳は飾り物か!和葉がそなたに池に突き落とされたのが見えていないか!」「烏森藍璃殿には、霊力の加護があり、死することはあるまい。なれど、和葉は人間じゃ。言わんや、そなたの.....」綾夏の話にまだ続きがあった

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