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十年間の濡れ衣を着せられて、私は夫と息子を彼女に渡した
十年間の濡れ衣を着せられて、私は夫と息子を彼女に渡した
著者: 月光森影者

第1話

離婚届は30分前に印刷したばかりのものだった。

その前に、私はリビングのソファで一晩中座り続けていた。

ダイニングテーブルには、私が心を込めて作った十数種類の料理が手つかずのまま残っている。

ウルトラマンのテーマケーキも、すでに溶けて原形を失っていた。

昨日は息子の健太郎の誕生日だった。

夫の悠一は健太郎を迎えに行って一緒に誕生日を祝うから、準備をするようにと言っていた。

でも、私は待てども待てども、結局待っていたのは美奈の「四人家族」投稿だった。

なんて滑稽なんだろう。

悠一は私が離婚を切り出すとは思っていなかったようで、眉をひそめ、離婚届を破り捨てた。

彼は不愉快そうに言った。「理沙、また何を言い出すんだ?ただ健太郎を連れて美奈と会ってきただけで、言い忘れただけだろ?」

そう言うと彼の視線はその食卓に移り、目の奥に一瞬の罪悪感がよぎった。

彼は少し声のトーンを和らげて言った。

「悪かったよ、昨日は連絡し忘れた。これからは気をつけるよ。

ここは俺が片付けるから、少し休んでくれ。昼に健太郎と一緒に外で食べよう」

彼はいつもこうだ。一度は叩くけど、すぐに飴をくれる。

自分がひどいことをしたとわかっていても謝りはしない。ただ、少し私に譲歩するだけ。

もし私がその譲歩に従わなければ、彼は私と冷戦を始める。そして私が耐えきれずに折れるのを待つのだ。

今までは私がいつも彼に折れてきた。でも今回は違う。私はもう一枚の離婚届を取り出し、テーブルの上に置いた。

「何十枚も印刷したんだ、好きなだけ破ってみなよ」

悠一は怒りに任せてコップを割った。

彼はイライラした表情で私を睨みつけて言った。「結局のところ、健太郎が美奈のほうを好いているのが気に入らないだけだろ?

理沙、お前が忘れちゃいけないのは、全部お前が美奈に借りがあるってことだ!

俺と健太郎が彼女たちを助けるのは、お前の罪を償っているんだ!」

償い?私に一体どんな罪があるというの?

私は美奈と親友だった。大学3年の夏休み、彼女が遊びに行こうと誘ってきた。

夜になり、帰る時、私は大通りを通りたかった。でも彼女は近道をしたがり、「友達が近くにいるから大丈夫だ」と言っていた。

だから、私たちは別々の道を選んだ。

でも翌朝目が覚めたら、悠一が私の家に怒鳴り込んできた。

彼はなぜ通報しなかったのか、なぜ美奈を見捨てたのかと私を責めた。

私は何も知らず、混乱していた。後にわかったことだが、山田美奈はその近道で不良たちに襲われたのだった。

彼女は私を助けるために彼らを引きつけたと言ったが、それは嘘だ。

私は必死に弁解したが、誰も信じてくれなかった。しかも監視カメラも壊れていたため、私はそのまま濡れ衣を着せられた。

それ以来、私は皆の目に罪人として映るようになった。

父も母も、私を冷酷だと非難し悠一も私を無情だと罵った。

彼らは私への愛をすべて「埋め合わせ」の名のもとに美奈に捧げた。

そして、私の息子まで奪われた。私が品行下劣だとして、息子を育てる資格がないとまで言われた。

そのせいで、私は健太郎との絆を深めることができなかった。

でも私は健太郎を愛していたし、私たちの関係を修復しようと必死だった。

私は健太郎を見つめた。彼もまた、私を冷ややかな目で見つめていた。

その目には憎しみすら宿っていて、まるで私は彼の敵であるかのようだった。

「お母さんがパパと美奈おばさんの人生を台無しにしたんだ。お母さんがいなければ、美奈おばさんが僕の本当のお母さんだったのに」

私はよろめき心が張り裂けそうだった。「誰がそんなことを言ったの?」

健太郎は眉をひそめた。「違うのか?」

私は悠一を見た。この瞬間、私はまだ彼が何か説明してくれるのではないかと期待していた。

でも彼はただ私の目を避けただけだった。

「健太郎はずっと、あの事件がなければ俺は美奈と結婚していたと思い込んでいるんだ」

もし以前なら、私はなぜ説明しないのかと彼に問いただしただろう。

なぜなら、彼は私の幼馴染で、私が二人を紹介した張本人であり、私こそが彼の彼女だったのだから......

でも今は、どうでもよかった。

健太郎がどう思おうと、もう私には関係ない。

私はスーツケースを引き、玄関へ向かった。

「よく考えてからね。役所で会いましょう」

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