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第6話

隼人:「話がしたい」

「話すことなんてないわ、もう別れたでしょ」

私は彼のアカウントを削除し、彼の番号もブロックした。

父を家に送った後、私は高熱を出したが、仕事を休むわけにもいかず、熱冷ましシートを貼りながら会社で働き続けていた。

退勤時、私は路上で隼人に行く手をふさがれた。

彼はどれだけタバコを吸ったのか、身体中に煙の匂いをまとっていて、普段とは違う少し疲れた様子だった。

「悪かった。朝夜のお母さんが亡くなったことも、一週間前が朝夜の誕生日だったことも、知らなかった」

「結婚しないのは、他の人が好きだからじゃない。ただ、僕の両親が不幸な結婚生活だったから、結婚に対する恐れがあるんだ。朝夜が望むなら、今すぐにでも結婚しよう」

隼人は赤いバラの花束を差し出してきた。

思えば少し悲しいことに、私たちがこんなにも長く付き合ってきたのに、花をもらうのはこれが初めてで…しかも別れた後にだなんて。

私は受け取らずにただ問いかけた。

「私が何十回も電話したのに、どうして出なかったの?」

彼は正直に答えた。

「君が僕に千早の卒業式や卒業旅行に行ってほしくないと思って、千早が僕のスマホを隠したんだ。本当に困ってたとは思わなかった。今後は、誰にもスマホを触らせないから」

千早…

千早。

また千早のこと。

この十年間で、彼女のことで私たちは何度口論したことだろう!

「私はもう疲れた。ここ数年、私が病気の時も、仕事で怒られた時も、友人と揉めた時も…隼人はいつも他の誰かと一緒にいた」

「仕事が忙しいなんて嘘をつかなくてもいいのに」

「飽きたら、ただそう言ってくれればよかった。私は隼人に縋りつこうとはしないから」

隼人は一瞬戸惑い、目が赤くなった。

彼は言い訳した。

「君が嫌がるんじゃないかって思って、本当は嘘をつくつもりはなかったんだ」

私は苦笑した。

「私が嫌がる?デートをする時間がないと言って、会議をキャンセルしてまで千早に会いに行ったのくせに?」

隼人は賢い人間だけど、千早のことに関しては、どうしても私と歩調を合わせられなかった。

彼は言った。

「彼女のことをいつまでも引きずるつもり?僕は彼女を妹として見ているだけで、君を裏切るようなことは一度もしていないよ」

彼が真実を話していることはわかっている。でも、それで私の気持ちが変
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