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第4話

彼女が私に嫌な思いをさせるのは、我慢できる。

でも、私の家族を侮辱することは絶対に許せない!

千早は腫れた頬を押さえながら泣き出した。

隼人はその様子を見て、表情が冷たくなった。

「朝夜、人を叩くなんてやりすぎだ」

私は彼を失望の目で見て、何も反論しなかった。

彼はいつも彼女を庇う。いい加減に慣れるべきだった。

けれど、父は我慢ならなかったようで口を開いた。

「夏川の小僧、お前の恋人は朝夜なのか?それとも彼女?朝夜が母さんの葬儀に参加するために帰ってきた時、なんでお前が一緒じゃなかったかと聞いたんだ。あいつはお前が忙しくて来られないって泣きながら言っていたけど、どうせ嘘だってわかってたさ。お前、何か隠し事してたな?」

「やっぱりそうだったのか」

「何年も付き合ってるのに結婚しないのは、外に女が出来ているからだな」

「たしかに、お前んちは条件がいいかもしれんが、朝夜だって俺たちが大事に育てた娘だ。そんな風に侮辱されるなんて道理が通らん!俺の前で堂々と愛人を庇っていたとは。人目がなければどんな酷い仕打ちをしているかわかったもんじゃない!」

「もう二人で付き合う必要なんてない。俺が反対だ!」

傍らにいた紅乃は、困惑しきりながら「堀池さん、奥様が亡くなったのはいつのことですか?私、連絡もらってませんでした…」と言葉を絞り出した。

隼人もその場で呆然とし、驚きと焦りが浮かんだ顔で私を見つめ、珍しくも動揺している様子だった。

でも私はただ視線をそらし、彼の目を避けた。

彼が私に冷たかったわけじゃない。ただ、彼の心の中では千早がいつも私より大事だっただけだ。

そんな安っぽい愛、もう欲しくない。

父は「俺の妻が亡くなったことは、お前ん家には関係ない!恩も返し終わったし、これからは互いに借りはなしだ!」と、私を引っ張ってその場を去ろうとした。

隼人は私を引き止めようと手を伸ばしたが、私は彼の手をかわした。

七日間ずっと、私は彼に連絡をし続けて、母のお墓参りに来てくれるように頼んでいた。母の願いを叶えてあげたかった。

彼が来てくれれば、それ以上は何も望まないつもりだった。

だけど、彼は来なかった。

その間、私は千早が卒業旅行の写真を毎日更新しているのを見ていた。どの写真にも隼人が写っていたけれど、私のかけた電話は一度も繋がらなかった。

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