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第68話

小さな魔王を家から送り出し、紗枝と唯は久しぶりに一緒に街をぶらぶらすることができた。

実言の件で、唯はこの期間桃洲に滞在し、景之の面倒を見ることに決めていた。

「唯、本当にありがとう」紗枝は心から感謝した。

「私たちの間柄でそんなに感謝する必要はないわよ」

一方、幼稚園では。

景之がクラスに現れると、彼の天使のような顔立ちが瞬く間に幼稚園の全ての女の子たちの視線を集めた。

先生が、彼が外国から帰ってきたことを紹介し、みんなで彼をよく面倒を見るようにと伝えた。

唯の甥、陽介は昨夜、自分の叔母さんから電話を受け、今日転校生が来るので、彼と友達になるように言われていた。

彼は、相手も自分のように丈夫な男の子だと思っていたが、予想外にも相手はとても美しい、まるで女の子よりも可愛らしく、保護欲を掻き立てられる存在だった。

陽介は彼に手を振って示した。

景之は素直に彼の隣の席に座った。

「君が夏目景之?叔母さんが君を面倒見るように言っていたよ」

陽介は胸を叩いて。

「心配しないで、これからは君は僕が守るよ」

「ありがとう、よろしくお願いします」

陽介は彼が美しいだけでなく、話す声もとても心地よいと感じた。

女の子だったら良かったのに、と彼は思った。

景之は彼の考えを知らず、教室の周りを見渡し、視線は教室の隅にある一つの席に留まった。

その席に座っている男の子は、豪華な小さなスーツを着ており、そのボタン一つ一つが非常に高価だった。

彼は机の前に座り、大きな欠伸をし、その小さな顔には高慢さが漂っていた。

陽介は彼の視線を追って見て、驚きの声を上げた。

「あれは黒木家の御曹司、明一だ。絶対に彼を怒らせてはいけない。

「もし彼を怒らせたら、僕は君を守れなくなるから」

景之は内心で微笑んだ。

唯おばさんの甥っ子は本当に彼女と同じ性格だ。

「心配しないで」

景之は彼に安心の眼差しを送り、視線を戻した。

陽介は心の中で、小姨が紹介した友達は本当に心配のいらない人だと思った。

幼稚園での授業は、絵を描いたり、折り紙をしたり、遊んだり、時折外国語を学んだりする程度だった。

景之はこれらを既に全て知っていたが、目立たないように普通の子供のように振る舞った。

それでも、午前中が終わる頃には、クラスの全ての女の子たちが彼を囲んで話しかけたり、
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