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第21話

葵が帰る前に話した言葉の意味をやっと分かった。啓司への苦情にしたのか。

答えようとしたが、啓司に中断された。

「離婚は僕たち二人のことだ。葵に手を出す必要がないだろう。彼女はまだ病院にいる」

紗枝は一瞬唖然としたが、すぐに分かった。

葵がこんな下品なやり方で自分を陥れるなんて、思わなかった。そして、啓司が信じた。

「信じてくれないと思うが、彼女とちょっと会っただけで、何もしなかった」

そこまで話して、紗枝は電話を切った。

病院。

啓司の顔色は醜かった。

葵が病床に横たわっており、頭にガーゼで巻いてた。

紗枝に会った後、彼女は頭をぶつかって怪我させて、紗枝に濡れ衣を着せた。

「ゆっくり話しようと思ったが、彼女は…」

葵が話しながら何枚かの写真を取り出して啓司に見せた。

夏石が妊娠したとわかってからわざわざ取ってもらったの。

「彼女のことを隠蔽する必要はなくなり、啓司君、写真を見たら怒らないでね」

啓司が写真を手に取り中身を見ると、体が不意に引き締った。

数十枚の写真、全てが紗枝と辰夫の二人だった。

二人の曖昧な写真を見て、啓司は我慢の限界に来た。

葵が上半身を引き上げた。「幸いなことに、私が見つけた。全部買い占めた。ネットにヒットされたら、大変なことになるわ」

啓司の心は乱された。

病院を出て、車に乗ってから、助手の牧野に写真を買い占めのお金を葵に振り込んでもらった。

最後に、「紗枝の居場所を調べてくれ」と指示した。

「わかった」

牧野は直ちに調べてさせた。

紗枝は一晩中悪夢を見ていた。

夢の中、啓司と葵が結婚して、幸せに暮らしていた。

また、ここ数年間のことも夢見ていた。

啓司が怒って、自分を置き去りにして出張に出た。

彼女は必死に探したが見つけなかった。

また、啓司が後悔して、ごめんと言って、仲直りしようと言ってきた。

自分は一切躊躇せず、同意した…

しかし、暫くしてから、啓司は再び彼女を置き去りにして消え去った。

目覚めてから、紗枝は目じりに手を当てると、涙が溜まっていた。

昼間に考えすぎると、夜に夢で再現すると言われた。彼女は啓司が後悔するとは期待しないし、万が一後悔したって自分が許せるかどうかも、敢えて考えもしなかった。

外はまだ激しい雨が降っていた。

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