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第590話

優子は、峻介がどんな計画をしているのかも知らなかったまま、ただメイクアーティストたちが彼女の顔にさまざまな化粧品を塗るのに身を任せていた。

時々、こんな声が聞こえてきた。「すごいですね、お嬢さんの肌は本当に赤ちゃんみたいに柔らかくて、佐藤総裁に大切にされているんですね。

それだけじゃないですよ。この顔立ち、一つも欠点が見つからない。いろんなタレントのメイクをしてきましたけど、生まれつきの美しさでも、整形した美人でも、ここまで完璧な人はそういないです」

優子は褒められて戸惑いながら、控えめに尋ねた。「あの、すみません。こんな風にお化粧して、私どこに行くんでしょうか?」

メイクアーティストは驚いたように、「佐藤総裁は教えてくれなかったんですか?私たちが言うとサプライズが台無しになるので、何も言わないほうがいいですね」と言った。

進から事前に話をしないよう指示されていたため、メイクアーティストたちは黙って彼女のメイクを続けた。

突然、外から耳障りな声が聞こえてきた。「私は三浦七海にヘアメイクをしてもらうためにわざわざ飛んできたんだから、何してるの?私が誰だかわかってる?」

「葉隠様、申し訳ございません。七海は朝早くから予約が入っておりまして、他のスタイリストも非常に有名な方ばかりですので……」

「私は七海じゃないとダメなの!お金が欲しいんでしょ?倍払うわ」

「お客様、これはお金の問題ではございません」

「あなたたちはお金に目がくらんでいるだけよ!七海を呼んでちょうだい!」

店員が何度も説得したものの、相手は短気な性格のようで、七海が出てこないことに業を煮やし、自分から乱入してきた。

「一体誰が七海を独り占めしてるのか見てやるわ」

優子はその人物に目を向けた。年齢は自分と同じくらいだが、非常に前衛的なファッションだった。

こんな大雪の日に、なんと生足でロングブーツを履いていた。

室内では問題なかったが、優子はその服装に違和感を覚えた。

その女性は優子を見るとさらに顔を曇らせ、「またあんたか。どこに行ってもあんたに会うなんて、本当にうっとうしいわね」と言い放った。

優子は彼女に覚えがなく、自分の鼻を指さしながら、「私に言ってるの?私たち、知り合い?」と尋ねた。

霧香は腕を組んで優子をじっと見つめた。この数か月の間に、優子の雰囲気は大きく変わ
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