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第35話

 なぜ里美が反発して、転んだのかと優子は疑問に思っていたが、これで里美の狙いが明らかになった。

子供がここに現れたのと、彼女が子供を抱いて転んだ理由、そして、どの角度から転べば、子供が確実に怪我するかさえ計算するほど、峻介に見せたかったからだ。

目的のために、自分の子供までひどい目に遭わせるとは、なんという残忍な女。

拓海が倒れるところを見ると、優子は意識より体のほうが先に行動し、拓海をしっかりと受け止めて、衝撃を緩和してあげた。

しかし一部の衝撃が、ちょうど彼女の点滴ポートがついた腕に加わってしまった。

重い物を持たないこと、腕を怪我してはならないと医者に念を押されていたが、子供が倒れたとき、彼女にはそこまで考える余裕がなかった、だって相手は幼い子供だから、彼女は自分の体のことを全く考えなかった。

彼女が急いで駆けつけたため、一瞬にして目眩がし、自分が引き裂かれるほど腕が痛んだ。

目を開けると、子供が彼女の胸に抱きついて、大きな目で彼女を好奇心いっぱいに見つめているのを確認したとき、優子はようやくほっとした。子供が無事でよかった。

それを見た峻介が早く近づいてきた。思い通りになった里美はすぐに立ち上がり、優子を叱った。「優子さん、私を憎んでいるのは分かっている、でも、拓海はただの子供、子供まで巻き込むの?」

確かに、他人の視点から見れば、優子は子供を傷つけるために飛びかかったように見える、初めて里美にはめられたわけではないから、優子は弁明する気にならない。彼女は痛みで汗だくになり、背中の冷や汗が止まらず、息をするだけでも痛みを感じた。

峻介は優子を責めなかった、彼はしゃがんで拓海を抱き上げたが、拓海は優子から離れたくないからだろうか、小さな手で彼女の服の襟をしっかりと掴み、口ごもって何か言っていた。

峻介が冷たい視線を拓海に注ぐと、幼い子供とはいえ、それを察知して黙った、悲しげな顔で優子を見て、抱きしめてほしいと言わんばかりだった。

峻介に代わって里美が抱くと、子供は里美に抱かれるのが嫌だからだろうか、泣き始めた。

「峻介のほうが好かれる」里美が可哀想そうに話した。「拓海を連れて、あなたに会いに来たけど、優子さんがこんなことを……」

峻介が彼女の話を不機嫌に遮った。「送ってやるよ」

優子は仰向けのまま、立ち上がろうとしているが、今の彼
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