第256話

小塚悠人は彼女の目に映った失望を見ていないかのように、手を差し出して言った。「優子姉さん、道に迷ったの？それとも足をくじいた？」

高橋優子は彼の手を拒み、自分で立ち上がった。そして、無理に笑みを浮かべて言った。「ちょっと考え事をしていて、気がついたらここで止まってしまっていたの」

「家がこの近くにあるんだ。優子姉さんがよければ、白い猫に会いに行かない？白い猫はずっと優子姉さんに会いたがっているんだ」

この理由では、彼女も断れなかった。

車内の温かさは、外の冷たい雨と対照的だった。小塚悠人はまだ封を開けていないミルクティーを手渡した。

「家に持ち帰るつもりだったけど、ちょうど優子姉さんにどうかなと思って」

高橋優子は一瞥をし、それが自分の大好きなミルクティーだと気づいた。

「ありがとう」

「姉さん、僕にそんなに気を遣わないで」彼は笑顔を浮かべ、片手でハンドルを操作して車をUターンさせた。

高橋優子は、彼がミルクティーを自分のために買ったのではないか、そして彼とここで出会ったのも偶然ではないのではないかとふと感じた。しかし、彼の顔には何の隠し事もなく、純粋で邪念もない表情が浮かんでいた。

彼女は自分の考えが現実的ではないと頭から追い払った。

「優子姉さん、どうしてそんな風に僕を見てるの？」

高橋優子は温かいミルクティーを飲みながら答えた。「ただ、時間の流れを感じていただけよ。昔の子供がこんなに早く大人になったんだなって」

彼の顔にはもう子供の頃のあどけなさもベビーフェイスもなかった。顎のラインは引き締まり、かすかに鋭さを帯びていたが、無精髭は見当たらなかった。

ハンドルを操作した彼の手首に光る腕時計が、まばゆい光を放っていた。

何とも不思議なことに、彼は少年のような青さと、大人のような落ち着きを兼ね備えており、それらが相反することなく彼の中で自然に調和していた。

彼は車を路肩に停め、口元をほころばせた。「優子姉さん、ちょっと待ってて」

そう言って彼は大雨の中へと駆け出し、10分ほどして戻ってきたときには、大きな袋を手にしていた。

袋には新鮮な果物や女性用の服が入っていた。

彼は紙袋を高橋優子の膝に置き、にこやかに説明した。「優子姉さん、さっきスカートの裾が濡れているのを見たから、適当に買ったんだ。サイズが合わなかったら、まあ、何とか