第9話

あの日、斎藤健が呼んだ警備員によって絢斗と雨宮優香は会社から追い出された後、二人は数ヶ月間大人しくしていた。

どうしてあの二人がこんなに静かにしているのか、逆に不思議に思っていた。

私は長期戦の準備を備えていたと言うのに。

どうやら絢斗の会社に問題が起きたらしく、彼は多忙のあまり余裕がなかったようだ。

だけど会社の状況はあまり芳しくないようで、一度、雨宮優香は突然私に対して狂ったように罵りのメッセージを大量に送りつけてきたことがあった。

彼女は「また絢斗くんに何か吹き込んだんでしょ！だから彼が、以前くれたアトリエを取り上げたのよ！」と怒鳴りつけてきた。

私は返信せずに、そのままスクリーンショットを撮ってSNSに投稿した。

「雨宮画家がずっと自慢していたアトリエって、実は私の夫が買ったものだったんだ？私に怒りのメッセージを送る暇があるなら、絢斗に頼んで早く離婚届にサインさせた方がいいんじゃない？」

彼女とは共通の友人が何人もいた。当時彼女が私に、その人たちを友達申請させてきたのは、私をさらに傷つけようと加勢させるためだった。

だから、今回の投稿は彼女を称賛していた人たちの目に入るだろう。

彼女の自慢が崩れ落ち、怒り狂う番がついにやってきたのだ。

投稿を終えた私はそのまま携帯をしまい、会社を後にした。

今日は私の誕生日だったから、健くんがレストランを予約して、誕生日を祝ってくれることになっていた。

ビルの外に出た途端、数ヶ月も顔を見なかった絢斗と鉢合わせした。

彼はかなり痩せていて、目の下には大きなクマがあり、暫くまともに寝ていないようだった。

私が無表情で彼を無視しようとしても、彼は笑顔を作って話しかけてきた。

「晴子、今日は君の誕生日だったよね。プレゼントを買ったんだ、一緒に食事でもどうかな？」

私は遠くから勢い良くタクシーを降りてくる雨宮優香と姑の姿を見て、少し滑稽に思った。

「どうやら、彼女たちはあなたが私と一緒に食事するのを望んでないみたいね」

絢斗の顔はひどく落ち込み、眉間には深いシワが刻まれ、疲れた声で苛立ち混じりに言い放った。

「優香、少しは大人しくしていられないのか？それに母さんまで呼んできて、何をするつもりだ？」

雨宮優香のお腹はかなり膨らんでいて、ざっと計算すると、もう8ヶ月くらいになるだろう。

今日の彼