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第7話

私は満を追い返し、耐えられなくなった広樹が私に電話をかけてきた。

「志帆、具合が悪いんだ。ちょっと来てくれないか?」

広樹の声はかすれていて、実に哀れだった。

結局、私は我慢できず、彼がどんな暮らしをしているのか見に行くことにした。

到着すると、ドアを開けてくれたのは広樹だった。この間会っていなかったが、広樹はかなり痩せており、服は皺だらけで、ズボンには黄色い汚れが少し付いていた。

私を見た瞬間、彼の目には涙があふれ出し、「今やっと分かったよ、長年志帆に世話になってたこと、俺は本当に馬鹿だった!」

彼は泣きながら謝罪し始めたが、私は笑って言った。

「何泣いてるの?馬鹿だったのは今日に始まったことじゃないよ。うまくいってないのを見て安心した」

彼は驚いて一瞬固まり、涙がまだ目に浮かんでいた。

「志帆……?」

「何?冷酷だって思ってるの?私のことを心のないつまらない人間だって言ったよね?そんなつまらない私が広樹を40年も世話してきたんだよ。40年もね、広樹。私の努力を踏みにじって、私を辱めたこと、もう忘れた?」

「彼女と一緒に雪を見て、花を鑑賞して、青々とした景色を楽しんでいるとき、家には妻が待っていたことを一度でも考えたことがある?」

「私は教授の妻だったけど、その前に一人の人間よ。私に最低限の尊重すらしてくれなかった。40年間精神的な浮気し続け、両方手に入れたいなんて。私の前で泣く資格あるの?」

「今日、広樹がどんな辛い日々を送っているか見に来ただけ。この私がいなくなったら、偉大なA大教授である江上広樹がこんなにもみっともないね」

「今のうちに自分に家政婦でも雇ったらどう?」

広樹の顔は赤くなり、苦々しげに言った。

「でも、でもお金がないんだ」

私は呆然とした。金がない?それなら一つの可能性しかない。

「早苗に全てのお金を捧げたでしょ?あの800万が広樹の全財産だったんだよね?」

案の定、彼はうなずいた。

愛のために全てを捧げたわけか。

「だから今になって、私を思いついたの?私はお金を使わないから?」

私は冷たく笑った。

「本当に汚い人間」

広樹は口ごもり、何も言えなかった。私は背を向けて出ようとしたその時、早苗がドアを開けて入ってきた。彼女は相変わらず紺色の和服を着ており、生地も良さそうだった。

私がいるのを見た瞬
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