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第4話

こんな状況で約束???

「実力次第」って、浮気相手を探すってことか?

峰子が全く気にせず、「東と感情を深め」と言った姿を思い出すと、私は複雑な気持ちになった。結局、電話を切り、東をLINEのブラックリストに入れた。

私はラテンアメリカンのダンス講師をしていて、最近は生徒たちとペアダンスの練習をしていた。来月、市の大会に出場するつもりでいた。

しかし、ペアを組んでいた男講師が家の事情で数日前に辞めてしまい、練習の進行が遅れていた。

この仕事は、週末になるほど忙しくなる。

園長から聞いたところ、今日は新しい男講師が来るという。彼はベテランで、大会でも何度も賞を取っているらしい。ただ、彼は本職があり、ダンス講師は副業とのこと。本業は、なんと医者らしい。

その男が教室に入ってきた瞬間、私は「世の中の医者はもう東しかいないのか?」と考えてしまった。

彼は黒いスパンコールのラテン服を着ていて、広い肩、細い腰、長い脚が完璧に際立っていた。深いVネックの衣装からは、白い肌と隠れた腹筋がちらりと見える。

教室の女生徒たちは、揃ってため息を漏らし、目を輝かせている。

私は茶を一口飲み、視線を逸らした。

「ラテンもできるの?」

東は口角を上げて笑った。

「ちょっとした趣味なのさ」

園長から聞いた「賞を取った」という話を思い出し、この自慢話も悪くないと納得した。

もちろん、こんな偶然だとは思えない。無力感を覚えながら、彼に言った。

「東は一体何がしたいわけ?」

「紗夜ちゃんが僕に会おうとしないし、連絡もくれないから、こうして自分で会いに来たんだ」

「病院は忙しくないの?」

「今日は休みだよ」

とにかく、彼は園長が連れてきた講師で、生徒たちは授業料を払っている。私は仕方なく、踊ることにした。どうせ生徒たちにステップを見せて、あとは彼らが自主的に練習するのを見守り、時々動きを矯正するだけだ。

だから、東と踊る時間なんて、ほんの数分で終わるだろうと思っていた。

でも、実際に踊ってみると、私は自分が甘く見ていたことに気づいた。

リハーサルの曲と振り付けはすでに決まっていて、若いカップルの恋愛を描いたものだ。彼らの感情は熱烈で、朝日のように鮮やかだ。

ペアダンスなので、身体が触れ合うのは避けられない。

ダンス中は感情を込めなければならない。そうでなけ
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