社長夫人はずっと離婚を考えていた
結婚して七年。藤田智昭(ふじた ともあき)の冷たい態度に、青木玲奈(あおき れな)はずっと笑顔で向き合ってきた。
彼を深く愛していたから。
いつか彼の心を温めることができると信じていたから。
でも、待っていたのは、別の女性への一目惚れと優しい気遣い。
それでも必死に守り続けた結婚生活。
誕生日に海外まで会いに行った日、彼は娘を連れてあの女と過ごし、彼女は一人部屋で待ちぼうけ。
ようやく心が折れた。
自分が育てた娘が他の女性をママと呼ぼうとしても、もう胸は痛まない。
離婚協議書を用意し、親権を放棄。すっぱりと去って、父娘のことは知らないふり。離婚証明書を待つだけ。
家庭を捨て、仕事に没頭した彼女は、かつて誰もが見下していた身でありながら、軽々と何兆円の資産を築き上げた。
でも待てど暮らせど離婚証明書は来ないどころか、以前は家に帰りたがらなかった夫の帰宅が増え、彼女への執着も強まる一方。
離婚の話を聞いた途端、いつもの高慢で冷たい男が彼女を壁際に追い詰めた。
「離婚?そんなことは絶対にありえない!」
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