夫と彼の初恋の夢を叶えてあげたら、彼らはただ一日だけ幸せだった
結婚式の前夜、
歴史学教授である婚約者の小山北年は、
がんを患う彼の「高嶺の花」――津元奈々と古い神社で和式の結婚式を挙げた。
彼は星空の下、津元奈々を抱きしめ、穏やかに笑いながら言った。
「ある人の言い伝えによれば、手に入れた者こそ正妻であり、
たとえ望月夏と既に婚姻届を出していても、彼女はただの愛人にすぎない」
祝福の声が響く中、二人は杯を交わし、その夜を共にした。
その様子を目の当たりにした私は、泣きも怒りもせず、静かに中絶手術の予約を取った。
十五歳から三十歳まで、私は小山北年を十五年も愛し続けた。
だが、彼の心の中には今もなお、義妹の津元奈々の居場所しかなかった。
そうであるならば、私は手放すことにした。
その後、私は人里離れた南極の地質探査研究チームに加わることを決意した。
彼に残したのは、一通の離婚届と一つの離婚の贈り物だけだった。
しかし、私に一向に無関心だった小山北年が、
なぜかその日を境に一晩で白髪になってしまったのだ。
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