侯爵家のマリア・ローレは、同じく侯爵家のカーステン・クライトンと婚約している。 それは、マリアの父であるローレ侯爵とクライトン侯爵が同じ侯爵同士だからと、物心ついた時から決められていた。 しかし、婚約者のカーステンは王都に住み、マリアの住むローレ侯爵家の邸は片田舎で遠いため、二人はまだ一度も直接会ったことはなく、手紙でのやり取りのみ続けられていた。 ある時、クライトン侯爵から、ローレ侯爵に書状が届く。 すると、ローレ侯爵は、マリアを執務室に呼び出してこう告げた。「マリア、申し訳ない。 クライトン侯爵から書状が届いて、大切な次期侯爵当主を妾の子のマリアとは、結婚させらないと書いてある。 残念だけど、お前達の婚約は、一方的に婚約破棄されてしまったようだ。 私は、その事を最初に話したつもりなんだが、聞いていないと大変お怒りの様子でね。 だから、お前をちょうどいい療養中の次男との婚約に変更するって書いているんだ。 婚約をこんな一方的に変えるなんて酷いとは思うが、貴族としては世間体を重視せざるを得ないから、そう言われてしまえば従うしかない。 力になれなくてすまぬ。」「お父様、カーステン様とは直接お会いしたことはありませんが、お手紙のやり取りを続けて来ました。 ですから、私はカーステン様と結婚したいと思っておりましたが、妾の子である私には彼らに何かを申し上げることはできませんね。 本音を言えば、こんな一方的な婚約破棄なんて嫌だと言いたいけれど、…わかりました。」 私はカーステン様と直接会ったことはないけれど、彼とお手紙のやり取りを重ねるうちに、彼のことを好きだと感じていた。 彼から送られる手紙には、学問や武術に励む日々の様子が綴られており、その頑張る姿を応援するそんな恋だった。 でも、私は確かに妾の子だから、侯爵家の方が否と言えば、カーステン様には不釣り合いなのだろう。 だから、私はこのまま諦めるしかないのだ。 彼のことを好きだと思っていたから、つらいけれど。 私の出生だけは、どうにもならない事実なのだから。「それでなんだが、お前達の婚約は世間にも広く知られていたから、カーステン卿をこのまま婚約破棄の状態にしておくわけにはいかない。 だから、代役として妹のハリエットを婚約者に立てたいそうだ。 お前からすれば、妹に婚約者を奪われる
Last Updated : 2025-04-25 Read more